─…怖い。

“レイプ”

この言葉が脳裏に浮かんだ。



どうしよう。

逃げなきゃ。
逃げなきゃ。

足が動かない。



─『黙ってろよ』─



亮介の冷たい目を

あの日の出来事を

鮮明に思い出した。



─やめてよ。

やめて─



平気だったはずなのに、知らない男とかぶっただけで、過去にまで恐怖がめばえた。



「─…てぇ…っ!」



菜摘は男の膝を思いきり蹴り上げた。

男が怯んでいる隙に腕を振りほどき、全速力で駆け出した。



もしもあれが複数だったら?

男が酔っていなかったら?

あいつが仲間を呼んだら─?



混乱する頭で必死に考えた。

家へ帰り、避難する方が先決だろう。

でも家よりコンビニの方が近い。

追い付かれたら、きっと今度こそ逃げられない。

逃げる方が先決だ。

そう思い、菜摘はコンビニへと走った。