ポケットで携帯が震えてることには気付いてるけど

続きが気になってしょうがない。

体が動かない。



「なあ、そんだけ山岸のこと見てたらわかんねぇ?本当はわかってんだろ?あいつが唯一人間らしくなんのは…菜摘といる時だけなんだよ」



そんな山岸を見るのが嬉しい、と

小さく付け足した。



「…でも…大ちゃんは彼女いるじゃん。菜摘振られたんだよ」

涙を堪えるのもそろそろ限界だ。

なぜかわからないけれど、なんだか悔しくて

それをぶつけるように目を合わせると、駿くんは切なそうな顔をしていた。

「あいつもさ、たぶん色々あるんだよ。言ってくんないけど」

『色々』ってなに?

駿くん、何が言いたいの?

菜摘に何を伝えようとしてるの?

ハッキリ言ってくれなきゃ、何もわからないよ。

「引き止めてごめんな。姉ちゃんきてるんだべ?…じゃあ、また今度な」



ねぇ、これ以上混乱させないでよ。

それを聞いて、菜摘にどうしろって言うの─