“またね。”

「なっつ!大丈夫!?」

駆け寄ってきたのは、理緒と由貴に麻衣子。

そして隆志。

違うクラスなのに待っていてくれたみたいだ。

「大丈夫だよ。ありがとう」

大丈夫。

みんなのおかげでちゃんと笑える。

「こっち見んなよ!うぜぇな!」

突き刺さるような鋭い視線に向かって怒鳴ったのは、由貴と麻衣子。

みんなは慌てて目を逸らした。

「菜摘、気にすんなよ。かっこよかったから!」

隆志のイマイチなフォロー。

でもやっぱり、元気づけようとしてくれてる、その姿勢が嬉しい。

「うん。ありがと」

菜摘はみんなに守られてる。

大切にされてる。

恵まれてる。

「帰るね」

「遊びに行くから」

「うん。バイバイ」

全部正直に言おう。

例え嫌われてもいい。

大切な人に嘘をつき続けるのは、何よりも辛いから。

鞄を手に取り、軽い足取りで玄関へと向かった。