“またね。”

泣いている間、大ちゃんはずっと抱き締めてくれていた。

目が合うと、大ちゃんの指が菜摘の頬に伝う涙を拭う。

とても冷たい指。

「お前ひっでぇ顔ー」

「うっさいな」

菜摘の頬を軽くつねり、大ちゃんがふっと笑う。

そんな大ちゃんにつられて菜摘も笑った。

自然と笑えたのはいつ以来だろう。



「てか寒くね?俺めっちゃ震えてんだけど!」

そう言うと、今度は菜摘を強く抱き締めた。

「あったけー…。菜摘ガキだから体温高いんだよ」

「ガキじゃないよっ」

暖かい。

人の温もりは、どうしてこんなに暖かいんだろう。

「足は?痛くない?血ぃ止まったかな」

「うん、大丈夫。ちょっとズキズキするけど」

「無理矢理連れ出してごめんな。保健室行こ」

大ちゃんだからかな─

菜摘なんかより、大ちゃんの方が暖かいよ。

「…ありがとう」

「何がー?」

「なんでもないよ」

暖めてくれてありがとう。

何も聞かないでくれて

抱き締めてくれて

救ってくれて

本当にありがとう。