少ない街灯に照らされた薄暗い道を、ただひたすら歩いた。

『途方に暮れる』って、こういうことを言うんだろうな─



涙は出ない。

ふとあの公園が目に入った。

どこか懐かしい。

足は自然と、その公園を向かっていて

雪で埋まっているベンチを通り越し、1番奥のベンチに腰掛けた。

屋根がついている、菜摘の指定席。

菜摘とあの人の場所。



なんだか無性に人恋しくなり、冷たい機械を握り締める。

今日はクリスマスイブ。

くるはずのないメール。

鳴るはずのない電話。

携帯ってこんなに冷たかったっけ─



グループごとに分けられた電話帳を、順番に見ていく。

理緒。

今頃、彼氏と楽しく過ごしてるのかな。

由貴、麻衣子。

フリーの友達を集めて、飲み会するって言ってたっけ。

伊織。

せっかくのクリスマスに久しぶりに呼び出して、泣き付くのは嫌。



みんな楽しく過ごしているのに、こんな状態で割り込むわけにはいかない。

菜摘、誰もいないじゃん─



そのまま見ていくと、1つの名前が目に入った。

名前を見ただけで、目に涙が滲む。

気が付いたら─

もう、送信していた。



《助けて》