乱れた髪。

捲られた服。

足にぶら下がっている下着。

そして─

心にも体にも刻まれた、鈍い痛み。

今最も憎むべきその人は、何事もなかったかのように、平然と煙を吐いていた。



呆然とその煙を眺める。

大嫌いなメンソールの香り。

その匂いを嗅いだだけで吐き気がする。



ゆっくりと起き上がり、乱れたものを直す。

ベージュのカーディガンを着て、上からコートを羽織る。

一言も交わさないまま、鞄を手に取り、部屋をあとにした。



─なんて惨めなんだろう。

今日はクリスマスイブ。

1年で1番楽しく過ごすはずの日に

1年で1番最悪な日になるなんて。

何も言えなかった自分が何より嫌だった。

悔しかった。



痛い。
痛い。

でも泣かなかったよ。

菜摘、泣かなかった。



菜摘が全部悪いんだ。

でも『許してあげなきゃ』なんて、そんなこと微塵も思ってない。

別れることが怖かった。

こんな状況になっても

亮介を失うのは、まだ怖い。