電気がついたままの部屋。

ソファーの上。

逆光で亮介の顔が暗い。

「うるさいんだって」

そう呟いた亮介の顔に、“表情”なんてなかった。

“物”を見るような、そんな目。



両腕を固定され、うまく身動きがとれない。

首に這う舌の感覚が気持ち悪い。

『汚い』とさえ思った。



「やめろよ!」

やっとの思いで出た言葉。

怖い。
怖い。

「やめ─」

「うるせぇな!俺のこと好きじゃねぇのかよ!」

─こればっかりはそういうことじゃないでしょう?

でも…

そんなことを言われてしまえば、何も言えなくなる。



「何も言うなよ。黙ってろ」



こんなの亮介じゃない。

─『なっち』─

嘘つき。
嘘つき。

涙は出ない。

絶対に泣かない。



痛みも

恐怖も

心の悲鳴も

ただ、ひたすら堪えていた。



助けて。
助けて。

心の中で、そう叫び続けた。



全部自分のせい。

菜摘の責任。

そう言い聞かせれば言い聞かせるほど

“絶望”

それしかなかった。