─どれくらい経っただろう。

うっすら意識を取り戻すと、部屋はもうすっかり暗くなっていて、隣に寝てたはずの亮介は起き上がっている。

意識がハッキリしてくると同時に聞こえた、カチカチという音。

「亮介…?」

何してるの?

亮介は小さくビクッとして、ゆっくりと菜摘を見た。

亮介の顔を照らす光。

手元には…

「何やって─」

菜摘の携帯。



少し混乱しながらも、頭をフル回転させた。

徐々に状況が理解できてくる。

「ちょっと!」

携帯をチェックされてるんだ。

どうして─?



「菜摘が…」

そう呟く亮介に怒りを覚えながらも、必死に心を落ち着かせた。

「…ねぇ、何してんの?なんでそういうことすんの?」

菜摘が何をしたっていうの?

どうしてコソコソ携帯見たりするの?



「…菜摘が、俺だけを見てくれないから」



─言葉を失った。

何も言えなかった。

それは菜摘が何よりも恐れてる台詞だから。



荒くなる呼吸を必死に整えながら携帯を取り上げると、電話帳の画面でメニューが開かれている。

「…消そうとしたの?」