「でも大ちゃんだって大変じゃん。さっきも『山岸くんのアドレス教えて』って言われたよ」

冷やかすように言うと、大ちゃんは困った表情を見せた。

「そういうのマジ困るんだよね。知らない女とメールなんかしたくないし」

呆れたように言う姿を見て、少しホッとした。

大ちゃんは他人に興味を示さない人だから。



「俺が彼女以外にメールする女は、菜摘だけだからって言っといて」



少しかがんで、菜摘の顔を覗き込む。

顔が至近距離になって、素直にドキドキした。



菜摘が聞きたいのは、言わせたいのはそういうこと。

菜摘は特別だよって、遠回しでもなんでもいいから言ってほしいんだ。

じゃなきゃ『亮介の彼女』でいられない。



どんどん卑怯になっていく。

せめて大ちゃんの前でだけは、純粋な気持ちでいたいのに。