「んっとね。俺が悪い…のかな?」

隆志のこういうところはイライラする。

じれったい。

「なに。5秒以内に言えよ」

「いや、怒んないでよ。ちゃんと言うから」

隆志は慌てながらも、ゆっくり続けた。



「彼女、すごいヤキモチ妬きでさ。女のアドレス全部消せって言われたわけ」

「で?消したの?」

「うん。でも…」

…ああ、なんとなく先が読めた。

標的が菜摘になった理由。

「菜摘のだけは消したくなくてさ。そしたら『なんでこの子だけ残してんの』ってなっちゃって」

やっぱりそういうこと。

そりゃ彼女も怒るよね…。

「消していいよ」

アドレスを消されたって全然構わない。

そんなことで、2人の友情は絶対に消えない。

「消さないよ」

「なんで?」

また信号に引っ掛かってブレーキをかける。

隆志の声は春風に流されて、菜摘の元へ優しく届いた。



「菜摘だけは絶対に消さない。彼女にもちゃんと言うから、安心して」



ニッコリと優しく微笑む隆志に、

静かに頷くしかなかった。

甘えてしまってもいいんだろうか。