家に帰ると、すぐに部屋へ駆け込んだ。

電気もつけず、カーテンも閉めず、布団に潜り込む。



─『調子こいてる』─

─『ウザイんだよね』─

─『消えてほしい』─

─『最低』─

─『全部あんたが悪い』─

─『2度と会いたくない』─

─『顔も見たくない』─



美香に言われた言葉の数々が、頭から離れてくれない。

『嫌われたこと』が悲しいわけじゃない。

『美香に嫌われていたこと』が悲しかった。

嫌われてないと信じてた人に嫌われてたことが、たぶん何よりも辛かった。

『嫌い』だと真っ向から言われたのが初めてだったから。



別に美香を利用してたとか、そんなことは絶対にない。

ただ―

菜摘は昔から、とにかく自分に自信がない。

だから、好きだと言ってくれてた美香が好きだった。



『最初は本当に大好きだった』



菜摘はいつだって自分が1番可愛いんだ。

やり方や意味は違うけど、裏切ってたのはお互い様。

それがなぜか無性に悔しかった。



散々泣いて、ふと思った。

あの人にも、本当に嫌われてしまったんだろうか。

どうしようもない不安に襲われる。



─この感覚は、前に1度だけ味わったことがある。

他人なんかどうでもいい。

その分『他人』だと認識してない人に執着してしまう。

だからこそ、『ひとり』に嫌われるのが怖くてしょうがないんだ。



─みんな、菜摘のことが嫌い?



怖くて

苦しくて

弱すぎた。