美香のことを信じていたかと聞かれたら、正直しきれていない。

まだ知り合って日が浅いし、シンナーのこともある。

じゃあなんでこんなにショックかって―

『信じたい』気持ちは大きかったから。

でもそれはきっと、『美香だから』じゃなく『友達だから』。

友達に―

菜摘を好きだと言ってくれてた人に、菜摘を好きでいてくれてると思ってた人に、こんなことを言われたのがショックだった。

…菜摘は、本当に美香のことが好きだったんだろうか。



「…なんでそんなことすんの?菜摘のこと最初から嫌いだった?理由言ってよ」

顔を上げられなくて

美香が今どんな表情なのか全くわからない。

長い沈黙を、美香が静かに破った。



「…あたしは悪くない」



─『あたしは悪くない』─

─それ、本気で言ってるの?

「最初は本当に大好きだった」

ならどうしてこんなことするの?

「菜摘が悪いんだよ」

─菜摘が何をしたの?



ゆっくりと顔を上げる。


外はもう、すっかり暗くなっていて

部屋を照らすのは月明かりだけ。



月明かりは

美香の涙を照らしていた。