出した物を鞄にしまうと、大ちゃんが思い出したように言った。

「菜摘、髪伸ばさないの?」

菜摘の髪に触れる。

大ちゃんの冷たい手が、頬に少しあたった。

「なんで?」

毛先をつまんでみると、肩にあたる程度の長さ。

そういえば、少し前に切ったばかりだ。



「俺、髪長い子が好きなんだ」



─そんなこと言われたら

伸ばさないわけにはいかない。

「…うん、伸ばしてみよっかな」

長くなったら─

菜摘を見てくれる?



「あのさ…なんか用事あるの?」

大ちゃんの手が菜摘の髪から離れる。

このまま一緒にいられるか聞こうと思ったけど、やめた。

だって大ちゃん、さっきから時間気にしてる。



「あー…うん。…今日は彼女と会うんだよね。ごめんね」



─彼女…



真っ白な世界が

グレーに染まった。