そんな声で

そんな表情で

そんな台詞を言われてしまったら

嫌いになれない。

許してしまう。

涙が止まらない。



「大輔は…ずるいよ」



追い掛けてこなければ

その台詞を聞かなければ

嫌いになれた?



─なれるわけないんだ、絶対に。



「…大輔じゃないじゃん」

「え?」

俯いたまま、大ちゃんが呟いた。

下から顔を覗き込む。



「菜摘は、『大ちゃん』でしょ?」



そう言って、小さく微笑んだ大ちゃんは

とても寂しい瞳を、菜摘に向けた。



なんて卑怯な人なんだろう。

─なんでこんなに好きなんだろう。



菜摘の腕を掴む手が強くなる。

「ほんとにごめん。ごめんね…」

大ちゃんの声は震えていた。

「…もう1回、信じるから」



きっと─

何度、嘘をつかれても

例え裏切られても

私はあなたを信じ続けてしまう。



その度に、私はあなたを

もっと

もっと

好きになる。