この前は、あんなに楽しかったのに。

今日もそうなると思ってたのに。



─『あたしはやってないよ』─

嘘つき。

─『もうしないよ』─

嘘つき。

─『約束ね』─

嘘つき─





「菜摘!」





─どうしてくるの?

ほっといてよ。

嘘ついたくせに。

約束破ったくせに

追い掛けてこないでよ…。



「待てって!」



腕を強く引かれて立ち止まる。

振り向きたくない。

顔なんて見たくない。



「…菜摘、こっち向いてよ」



ねぇ、お願いだから

そんな声出さないでよ。



「菜摘…」



名前、呼ばないでよ…。



「…やっぱり。なに泣いてんだよ」



ほらね。

振り向いたら

顔を見たら─



涙を堪えることなんて、できなくなっちゃう。