「…あの、戸田くん、あの子は?」
さっきのブラック戸田くんに少々ビビりながらも尋ねる。
戸田くんは頭をがしがしかいて、小さな声で「…妹」と言った。
い、妹さんだったのか。
なんだぁ〜、びっくりしたぁ。
「なんだと思った」
「愛人かと思いました」
「はぁ?! なに考えてんの、ばぁか」
そう言いながら、戸田くんは教科書を出した。
どうやら世界史のよう。
戸田くんは教科書を私に見せないように持って「これは簡単だから」と言う。
「フランス革命後、フランスをまとめた人物は?」
えーーっとね、これ知ってるよ。
確か、ナポ……
ナポ…………
ナポ…………………?
「……っあ! ナポリタン!」
いやぁ、私ってば天ッ才!
岡田さん、頭いいじゃないですか〜
「……食べにいく?」
「…はい?」
いやいやいや、ナポリタンさんは食べ物じゃないでしょ!
「実里、大不正解。 ナポリタンは食べ物。今の答えはナポレオン」
…………あ。
この間違いってよくあるパターンのでしょ?
うあ、それだけは避けたかった。
どうせなら、もっと面白いの言って間違った方がマシだったよ…!
たとえばほら、あの、アメリカの………
オバマさんとか!
「実里は一緒にいて飽きないね」
ショックが大きすぎて、素直に喜べない。
戸田くんはそんな私を見て、頭をぽんぽんってした。
「実里は頭よくなるよー。 多分」
「多分、って、それ完全に保証されてないじゃないですか……しかも現時点で頭よくないって言われてる…ほんとのことですけど…」
※現場報告!
戸田くんの頭の良さは、どうやら本棚ぎっしりに詰まった参考書の数々のようです。
おっきな本棚、戸田くんの部屋に三つありました!