「戸田1位じゃんかよ!すっげえ!!」
いっ、いいいい1位ですと?!
うわぁ、私には夢のまた夢のまた夢のまた……………
言い出したらキリがない。
「おーい、教室入れーーー!」
そう叫びながらやってきたのは、いつものあの先生達。
現代文の佐藤先生、化学の前川先生、そして世界史の池田先生。
順位表に群がる生徒達を、先生達は羊を小屋にかえすみたいに追いかける。
戸田くんはすでに分かり切ったみたいに、もう教室で座っていた。
……いや、寝ていた。 と言った方が正しいかも。
私も周りに一緒に流されながら教室にたどり着いた。
数学の授業。
いつもは、一瞬たりとも聞き逃すまいと、必死に耳を傾けていた山田先生の面白エピソード。
今日はそれを右から左で、頭の中は戸田くんの事。
いつも寝てばっかりなのに、なんで一位をとれるんだろう…?
なにか秘密兵器があるはずだ!
よーーっし!!
「戸田くん、勉強教えてほしいんですが……」
放課後の玄関で、私は戸田くんにそう言った。
戸田くんは一瞬固まって、頷いた。
「いいよ」
「ほんとですか? やったぁ!」
「でもいきなりどうしたの」
戸田くんが靴を履き替えながら、私に尋ねてくる。
『戸田くんの秘密兵器探るためです!』……なんて口が裂けても言えない!
「…い、いやぁ、今回のテストひどかったから、です…ねー」
「何位」
ゔぅ。
私より頭いいのわかってるくせに…
「さ、314位…です…」
「…うん、すごいね」
すごいね、って言われて落ち込むの初めてです………。
「だから、教えてほしいんですが…」
「あーうん、頑張れー」
「戸田くん思いっきり棒読み!」
「気のせいじゃない」
戸田くんはそう言ったけど、ははって笑っていた。