『ソレ』は漂っていた。
ただ、漂っていた。
ここは暗く、生温かい。
澱んだ泥濘みたい。
なんか、スゴくツラいコトがあった気がする。
忘れちゃいけないコトも、あった気がする。
ドーデモ イイジャン
ソンナノ イイジャン
だよねー?
どーでもイイや。
ここにはナニもない。
ナニもないから、心地良い。
もうすぐ『ソレ』も溶け合って、泥濘が増殖するんだろう。
ソレハ イイ
モット キモチイイ
そだねー。
それまでユラユラ漂って…
遠くで、赤い光が瞬いた。
なんだろ?
なんだか懐かしい。
ドーデモ イイジャン
ホットケヨ
うん…
でも…
近づいているのだろうか。
光はどんどん大きくなる。
あの色はキライだ。
暗い哀しみを溢れそうなほど湛えているのに、乾ききったルビーの色。