「あ、月……」 ぽつりと、夜空を見上げた女が呟く。 夜空に輝くソレは、妖しく彼女を惑わす。 「…っ、」 ソレを映す彼女の瞳に微かな痛みが走る。 そして、瞳がほんのりと桜色に色付く。 散歩中だったのか、彼女の格好は動き易そうな黒のジャージにパーカーといったもので。 月明かりに栄える淡い桜色のパーカーからは胸まで垂れた長い髪が、夜風に揺れる。 「あっち…?」 ソレを見上げていた彼女は、何かに誘われるかのように歩き始めた。 そして―――――