オオカミ少年。


「ちょっと、中田」

あたしの歩幅なんて考えないでズンズン歩いていくから、あたしは小走りでついていくのがやっとだった。


止まりたいけど、ガッシリ腕を捕まれてるから止まれない。

そのせいで、周りの人から注目される。

さっきのことは、こういうことが原因なのに。


「中田っ」

さっきから中田の名前を呼んでいるのに、中田はまるで聞こえていないみたいだった。


振り向きもしない。

ほんと、何なんだ?


「どこ行くのー」

息切れしてるあたしからしてみれば、今すぐにでも止まってほしいんだけど、中田は全然疲れてないみたい。

止まる気配なし。


「なーかーたー」


どんどん人気のない方向に歩いていく。人がいないとこ行って何するつもりだよ。

もう何を言っても止まらないことを察して、黙って中田についていく。

あたし、息切れハンパじゃないけど。