オオカミ少年。


「この人数で平山1人に?」

「うん…」


ここまで中田が怒ってるところを見たのは、ホワイトデー以来だった。普段はこんなところ見せないのに。

何故か分からないけど、中田は最近よく怒る。

みんなが言う通り、中田は凄く分かりやすい性格をしてるのかもしれない。


「…あのさ、俺のことでこいつに何か言ってたなら…」

あたしのために怒ってるの?


「俺許さねぇよ?君たちのこと。」

強張る女の子の表情と、怒りを露にする中田の表情。どちらもあたしが原因だと考えると申し訳なくなった。


「つーか、言うなら俺に言え。」

中田はそう言い捨てて、あたしの腕を掴んで歩き出した。


心臓が少し強く波打ったのは、中田がカッコよく見えたからじゃない。きっと、ビックリしたから。

カッコよく、見えるわけないもん…