この日のためにエステにも通ったし、食生活も気をつけた。

一生に一度の結婚式で、興奮しない女性はいないだろう。
でも、私のこころはまだ不安でいっぱいだ。


もしも君が 私の腕を掴んで
もしも君が 私を強引に連れ去って

遠く遠くに 走って走って

彼から見えない場所に
彼を感じない場所に

あなたに逢いたい私の気持ちは
噓の幻想? それとも理想?


髪をセッティングされながら、ふと自分の小指を見つめた。
そういえば、指きりげんまんしたっけ。

あの頃疑わなかった彼からの愛。
でも、私は自分から離れてしまった。

それは見栄だったのかもしれない。
家族や友だちへの変なプライドのせいかもしれない。

別れを選んだ次の日に、出会った男性との結婚式。
元カレはどう思うだろう?
夫となる彼はどう思うだろう?

髪のセッティングが終わったところで、自分の全身を鏡に映してみた。
やっぱり何かが欠けている気がする。
心に開いた穴は、ふさがっていない気がする。


「おい!」
突然発せられた言葉にビクッとして振り返ると、信じられないモノが目にはいった。