主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②

とにかく耳と尻尾が生えた姿など絶対潭月に見られたくない主さまは、また部屋に結界を張って閉じ籠もる作戦に出た。

ただ息吹は部屋を掃除して回ったり料理を作ったりで部屋を出たり入ったりするので、息吹だけは出入りできるようにしていたのだが――潭月が始終様子を見に来る。


「おい十六夜、どうした?具合でも悪いのか?」


「どこも悪くない。俺に干渉するな。早くこの場から離れろ」


襖ひとつ隔てた廊下側に居た潭月は、ちょろちょろしている息吹がいつになく嬉しそうにしているので、主さまに何かあったのだという確信があった。

なので1度様子を見に来るとなかなかその場から離れずに主さまをいらつかせる。


「あ、潭月さん。主さまはその…ちょっと具合が悪いので、私が看病しますね。大丈夫ですから。ふふふ」


「そうか?何か必要ならばすぐに言ってくれ。では十六夜、またな。ふふ」


息吹同様に含み笑いをした潭月がその場から離れると、息吹は自分が入り込める分だけ襖を開けて中に入るとすぐに閉めて、どたどたと地団駄を踏んだ。


「…どうした?」


「どうしたっていうか!主さまが可愛いんだもん!耳と尻尾がぴょこぴょこしてるよ、触らせて!」


息吹が耳と尻尾の生えた生き物が好きだということは息吹が幼い頃から知っていたが――まさか自分が撫で回される目に遭うとは。

だが息吹にそう言われると、意志とは裏腹に尻尾が勝手に動きまくり、主さまは尻尾に飛びかかってきた息吹を受け止めてぎゅうっと抱きしめて羽交い絞めにした。


「俺ばかり触るのは対等じゃないな」


「私にも耳と尻尾が生えたらいいのに!父様にお願いしてみようかな、触りっこする?」


触りっこという言葉にまた反応した主さまの尻尾がぶんぶん動くと、瞳を輝かせた息吹は手を伸ばしてふかふかの両耳をがっしり掴むと撫で回した。


「銀さんを見てるといつも撫でたくなっちゃって大変になるの。でも主さまの額に角が生えてる姿も素敵だなって思うよ」


「…怖くないのか?」


「怖い?そんなこと思ったことないよ。でも主さま可愛い。鏡見た?もお、すっごく可愛いんだから!」


“可愛い”を連発されて頬が赤くなるのを抑えられない主さまは、密室になっているのをいいことにあっという間に息吹の帯を外して目を丸くされた。


「ぬ、主さま!?」


「触りっこだと言ったな?今度は俺の番だ」


息吹、失言。