夕方になっても息吹と離れ難い主さまは、百鬼との合流を遅らせて縁側で息吹の膝枕にあやかっていた。
すると周がそれを見かけて部屋の出入口で扇子を振り、息吹が気付くと手招きをして主さまの邪魔をしてむっつり。
「…行くな」
「すぐ戻って来るから、ちょっと待っててね」
拗ねた主さまの頭の下に折った座布団を敷いて周に駆け寄ると、妖艶な義母は三白眼の美しい黒瞳に悪戯っ子のような光を瞬かせた。
「そなたは十六夜の弱点を知っておるか?」
「弱点?主さまに弱点なんかあるんですか?」
「ある。そこを突けば一発でめろめろのふにゃふにゃになる。良い機会じゃ、そなたに教えておこう」
息吹と周がこそこそ内緒話をしている様子に主さまは聞き耳を立てていたが全く聞こえず、庭を眺めながら欠伸をしていると、息吹が戻って来てまた膝枕をした。
…だがいつも以上ににこにこしていて不気味なことこの上なく、主さまは息吹を見上げて手を伸ばして鼻をつまむ。
「なんなんだ、にやにやするな」
「にやにやじゃなくてにこにこだもん。ねえ主さま、いい子いい子してあげようか」
「な…っ、なんだと?俺は童子じゃないんだ、絶対するな」
「いい子いい子」
するなと言ったのに息吹が手を伸ばして、そこに触れると――主さまの瞳がかっと見開かれた。
息吹が触ったのは、主さまの額の左右だ。
鬼の力を解放した時にそこから短い角が現れるのだが…そこに触れられると、力が抜けてうっとりしてしまう。
角が生える部分を優しく撫でられてめろめろのふにゃふにゃになった主さまは、むらむらっとしてしまって息吹の首に手を回して引き寄せると、息吹は主さまの鼻をつまんでにっこり微笑んだ。
「浮気したらみんなの前でおでこ撫でてふにゃふにゃにしてやるんだから。主さまがめろめろになってる姿を見てどう思うかなー」
「…絶対するな。浮気などしない。ああ…来てしまった。もうこんな時間か」
主さまが身体を起こしてため息をついた。
合流が遅れていることを心配した百鬼たちが高千穂まで来てしまい、先頭で主さまの代行を務めていた銀が庭に舞い降りて鼻を鳴らした。
「楽しくやっているみたいだな。今夜は俺が率いても構わないぞ」
「ふざけるな、お前は代行だ。…息吹、行って来る」
「はい。気を付けて行ってらっしゃい」
息吹と話したい百鬼たちが庭に降りてきてわらわら息吹に群がり、主さまは額を着物の袖でごしごし擦って息吹の手の感触を忘れようと努めた。
すると周がそれを見かけて部屋の出入口で扇子を振り、息吹が気付くと手招きをして主さまの邪魔をしてむっつり。
「…行くな」
「すぐ戻って来るから、ちょっと待っててね」
拗ねた主さまの頭の下に折った座布団を敷いて周に駆け寄ると、妖艶な義母は三白眼の美しい黒瞳に悪戯っ子のような光を瞬かせた。
「そなたは十六夜の弱点を知っておるか?」
「弱点?主さまに弱点なんかあるんですか?」
「ある。そこを突けば一発でめろめろのふにゃふにゃになる。良い機会じゃ、そなたに教えておこう」
息吹と周がこそこそ内緒話をしている様子に主さまは聞き耳を立てていたが全く聞こえず、庭を眺めながら欠伸をしていると、息吹が戻って来てまた膝枕をした。
…だがいつも以上ににこにこしていて不気味なことこの上なく、主さまは息吹を見上げて手を伸ばして鼻をつまむ。
「なんなんだ、にやにやするな」
「にやにやじゃなくてにこにこだもん。ねえ主さま、いい子いい子してあげようか」
「な…っ、なんだと?俺は童子じゃないんだ、絶対するな」
「いい子いい子」
するなと言ったのに息吹が手を伸ばして、そこに触れると――主さまの瞳がかっと見開かれた。
息吹が触ったのは、主さまの額の左右だ。
鬼の力を解放した時にそこから短い角が現れるのだが…そこに触れられると、力が抜けてうっとりしてしまう。
角が生える部分を優しく撫でられてめろめろのふにゃふにゃになった主さまは、むらむらっとしてしまって息吹の首に手を回して引き寄せると、息吹は主さまの鼻をつまんでにっこり微笑んだ。
「浮気したらみんなの前でおでこ撫でてふにゃふにゃにしてやるんだから。主さまがめろめろになってる姿を見てどう思うかなー」
「…絶対するな。浮気などしない。ああ…来てしまった。もうこんな時間か」
主さまが身体を起こしてため息をついた。
合流が遅れていることを心配した百鬼たちが高千穂まで来てしまい、先頭で主さまの代行を務めていた銀が庭に舞い降りて鼻を鳴らした。
「楽しくやっているみたいだな。今夜は俺が率いても構わないぞ」
「ふざけるな、お前は代行だ。…息吹、行って来る」
「はい。気を付けて行ってらっしゃい」
息吹と話したい百鬼たちが庭に降りてきてわらわら息吹に群がり、主さまは額を着物の袖でごしごし擦って息吹の手の感触を忘れようと努めた。

