仲睦まじく屋敷へ戻ると、とんでもない光景が待っていた。
広間には嫁候補だった女5人がずらりと並んで座り、部屋に入ろうとした主さまは出入口で脚を止めてその光景に絶句。
後ろを歩いていた息吹は主さまが突然立ち止まったので脇の下からひょっこり顔を出して中を覗き込むと…同じように絶句。
「おお十六夜、戻って来たか。これは俺の差し金じゃないぞ、こいつらが勝手に来たんだからな」
「…何の用だ、断りもなく来るな」
「主さまがどんな女を連れてきたのか皆が見たいと言うので。…何か問題でも?」
右端に座っていた寧がにっこりとほほ笑んだが…目は笑っていない。
だが主さまが真に恐れていたのは…背中側に居る息吹だ。
先程から一言も言葉を発さずにいたので、恐る恐る振り返ると――
「…みんな美人。みんなに手を出してたんでしょ?」
「……だから過去のことだと…許してくれると言ったじゃないか」
「皆さんこんにちは、息吹と申します。主さまが以前お世話になったそうで、ありがとうございました」
息吹なりの皮肉が炸裂。
皆が引きつった表情を浮かべて顔を見合わせていると、扇子で口元を隠しながら笑みを噛み殺していた周が息吹を手で呼び寄せた。
息吹は引き止めようとする主さまの脇をすり抜けて周の隣に座ると、主さまは仕方なく少し距離を置いて皆の前に座ってむっつりしながら腕を組んだ。
「あれが俺の妻だ。お前たちは母上たちの任から解かれた。今後は俺と息吹に干渉せずに過ごせ。それが無理ならば、村から出ろ」
「そんな…私たち鬼族の中から選んで頂けるのでは…」
「約束はしていないし、俺の妻は息吹だけだ。人ではあるが、問題はない。お前たち…息吹より秀でているものはあるのか?俺にはそれが見当たらない」
――主さまは本来他人を誉めるような男ではない。
今も息吹の方をちらちら見て視線を送っているし、嫁候補の女たちは皆美しいが、ただそれだけといった印象が拭えない。
対して息吹は可憐で芯が強そうだし、主さまから顔を背けてぷんぷんしている。
…主さまにそんな態度をすれば…場合によっては殺されることもあるというのに。
「…息吹、こっちを向け」
「外を見たいから見てるだけです。お義母様、お茶を淹れてきますね」
「ああ。そなたの淹れてくれる茶はほんに美味じゃ」
息吹が席を立つと、つられるように主さまも立ち上がって息吹の後を追って行った。
同席していた潭月はとうとう噴き出して大笑いをした。
広間には嫁候補だった女5人がずらりと並んで座り、部屋に入ろうとした主さまは出入口で脚を止めてその光景に絶句。
後ろを歩いていた息吹は主さまが突然立ち止まったので脇の下からひょっこり顔を出して中を覗き込むと…同じように絶句。
「おお十六夜、戻って来たか。これは俺の差し金じゃないぞ、こいつらが勝手に来たんだからな」
「…何の用だ、断りもなく来るな」
「主さまがどんな女を連れてきたのか皆が見たいと言うので。…何か問題でも?」
右端に座っていた寧がにっこりとほほ笑んだが…目は笑っていない。
だが主さまが真に恐れていたのは…背中側に居る息吹だ。
先程から一言も言葉を発さずにいたので、恐る恐る振り返ると――
「…みんな美人。みんなに手を出してたんでしょ?」
「……だから過去のことだと…許してくれると言ったじゃないか」
「皆さんこんにちは、息吹と申します。主さまが以前お世話になったそうで、ありがとうございました」
息吹なりの皮肉が炸裂。
皆が引きつった表情を浮かべて顔を見合わせていると、扇子で口元を隠しながら笑みを噛み殺していた周が息吹を手で呼び寄せた。
息吹は引き止めようとする主さまの脇をすり抜けて周の隣に座ると、主さまは仕方なく少し距離を置いて皆の前に座ってむっつりしながら腕を組んだ。
「あれが俺の妻だ。お前たちは母上たちの任から解かれた。今後は俺と息吹に干渉せずに過ごせ。それが無理ならば、村から出ろ」
「そんな…私たち鬼族の中から選んで頂けるのでは…」
「約束はしていないし、俺の妻は息吹だけだ。人ではあるが、問題はない。お前たち…息吹より秀でているものはあるのか?俺にはそれが見当たらない」
――主さまは本来他人を誉めるような男ではない。
今も息吹の方をちらちら見て視線を送っているし、嫁候補の女たちは皆美しいが、ただそれだけといった印象が拭えない。
対して息吹は可憐で芯が強そうだし、主さまから顔を背けてぷんぷんしている。
…主さまにそんな態度をすれば…場合によっては殺されることもあるというのに。
「…息吹、こっちを向け」
「外を見たいから見てるだけです。お義母様、お茶を淹れてきますね」
「ああ。そなたの淹れてくれる茶はほんに美味じゃ」
息吹が席を立つと、つられるように主さまも立ち上がって息吹の後を追って行った。
同席していた潭月はとうとう噴き出して大笑いをした。

