主さまの視線が首筋や肩に張り付いているのを感じる。
どれだけ“見ないで”と言ってもまるで無視されて、抱き寄せられてしまうと膝に乗せられてぐっと顔が近くなった。
「昨晩寧に会ったのか?それでずっと嫉妬を?」
「嫉妬っていうか…むかむかはしてたよ。主さまってやっぱり女たらしなんだなあ、とか…私ひとりで満足できるのかなあ、とか…」
「2人も3人も要らない。俺は理想が高いんだ。妻は俺自身で見つけて惚れた女でないと嫌だとずっと思っていた」
「私たち…色々あったもんね。私は平安町の父様のお屋敷に引き取られてから外に出なかったから、会うのは道長様だけだったけど…主さまはその間も女遊びしてたんでしょ?」
主さまは黙り込み、小さな息吹が幽玄町を去って行った時のことを振り返った。
心にぽっかり穴が空いて――日がな絵師に描かせた未来の息吹の絵を見てはため息をつき、毎日晴明の屋敷に押しかけて連れ戻そうと思いながら、それを実行できずにいた日々。
女遊びをする余裕も一切なく、また興味もなく、息吹に去られたことがとても悲しくて、独りで眠る床がとても冷たいことに気付いた。
もうあんな思いは二度としたくはない。
「女遊びなどお前が平安町へ行ってからしていない。女も食っていない。食うのは…お前だけだ」
「主さ……、いた…っ」
息吹の右肩に主さまの鋭い牙が少しだけ食い込んだ。
血が出るほどのものではなく、あくまで噛み痕がつく程度のものだが…主さまは時々こうして息吹の肩を噛んで所有印をつける。
それが消える頃にまた噛んで――息吹もそれを嫌がらずに受け入れた。
主さまに独占欲を抱かれていることが嬉しかった。
「わかったか?俺がもし浮気をしたならば、煮るなり焼くなり好きにしていい。だから実家に帰るのだけはやめてくれ」
「父様のお屋敷?うん、私も帰らないつもりで主さまに嫁いだから大丈夫だよ。それより主さま…どこ見てるの?」
主さまの視線はお湯に隠れている息吹の胸に集中し、気分が盛り上がった主さまは息吹に顔を近付けて唇が触れ合合いそうな距離で止めた。
「お前を見ているに決まっている。いいか、ここに滞在している間嫌な目に遭ったらすぐ俺に言え。お前は俺の妻なのだから、歯向かう奴は許さない」
「はい。主さま大好き」
素直に想いを口に乗せてくれる息吹を抱きしめて口づけをした。
八咫烏の視線に怯えながら。
どれだけ“見ないで”と言ってもまるで無視されて、抱き寄せられてしまうと膝に乗せられてぐっと顔が近くなった。
「昨晩寧に会ったのか?それでずっと嫉妬を?」
「嫉妬っていうか…むかむかはしてたよ。主さまってやっぱり女たらしなんだなあ、とか…私ひとりで満足できるのかなあ、とか…」
「2人も3人も要らない。俺は理想が高いんだ。妻は俺自身で見つけて惚れた女でないと嫌だとずっと思っていた」
「私たち…色々あったもんね。私は平安町の父様のお屋敷に引き取られてから外に出なかったから、会うのは道長様だけだったけど…主さまはその間も女遊びしてたんでしょ?」
主さまは黙り込み、小さな息吹が幽玄町を去って行った時のことを振り返った。
心にぽっかり穴が空いて――日がな絵師に描かせた未来の息吹の絵を見てはため息をつき、毎日晴明の屋敷に押しかけて連れ戻そうと思いながら、それを実行できずにいた日々。
女遊びをする余裕も一切なく、また興味もなく、息吹に去られたことがとても悲しくて、独りで眠る床がとても冷たいことに気付いた。
もうあんな思いは二度としたくはない。
「女遊びなどお前が平安町へ行ってからしていない。女も食っていない。食うのは…お前だけだ」
「主さ……、いた…っ」
息吹の右肩に主さまの鋭い牙が少しだけ食い込んだ。
血が出るほどのものではなく、あくまで噛み痕がつく程度のものだが…主さまは時々こうして息吹の肩を噛んで所有印をつける。
それが消える頃にまた噛んで――息吹もそれを嫌がらずに受け入れた。
主さまに独占欲を抱かれていることが嬉しかった。
「わかったか?俺がもし浮気をしたならば、煮るなり焼くなり好きにしていい。だから実家に帰るのだけはやめてくれ」
「父様のお屋敷?うん、私も帰らないつもりで主さまに嫁いだから大丈夫だよ。それより主さま…どこ見てるの?」
主さまの視線はお湯に隠れている息吹の胸に集中し、気分が盛り上がった主さまは息吹に顔を近付けて唇が触れ合合いそうな距離で止めた。
「お前を見ているに決まっている。いいか、ここに滞在している間嫌な目に遭ったらすぐ俺に言え。お前は俺の妻なのだから、歯向かう奴は許さない」
「はい。主さま大好き」
素直に想いを口に乗せてくれる息吹を抱きしめて口づけをした。
八咫烏の視線に怯えながら。

