式神たちが慌ただしく屋敷内を駆け回っていたので、息吹の部屋で息吹を待っていた主さまは部屋を出て庭に出た。
「晴明?どうした、一体何が…」
「ああ、これから息吹が椿姫に会いに行く。そなたはここに留まっていてもいいぞ」
「…な、何…?何故息吹が椿姫に…」
主さまの端正な美貌にじわじわと不安の色が浮かび上がる。
すると姿を消した主さまのすぐ脇を、重たい腹を抱えながら息吹が通り過ぎて玄関へと向かった。
本当にいつ産まれてもおかしくない状況なので、もし躓いて転んだりしては大変だとすぐ後を追った主さまは、気配を押し殺して息吹の隣を歩いた。
「ふぅ…重たいなぁ…」
ぽつりと呟いた息吹の額には汗が浮かんでいた。
傍に居てやりたい、できるならばその苦労を少しでも肩代わりしてやりたいと思いながらも何もできずに一緒に牛車に乗り込むと、大きな腹をじっと見つめた。
逆子を無事に産む確率は、思っているよりもかなり低い。
難産になるだろうと晴明に告げられてからずっとそれが気にかかっていた主さまは、百鬼夜行にも身が入らずに銀から毎日のようにからかわれていたが、返す言葉もない。
「椿姫にはとても壮絶な過去があるが、そなたには及ばぬ。だが本人にとっては死を選ばざるを得ない程に苦痛な体験をした。それを踏まえて話を聞きなさい」
「はい。あの…ふたりきりで話をしてもいいの?」
「いや、そなたの体調が気がかり故私は部屋の隅に居るよ。だが話には介入しない。私のことは居ないものとして考えてほしい」
「はい。…取り乱したらごめんなさい」
「いいとも、そなたも苦しんでいるからね。腹の中の孫が驚いて出てこない程度に取り乱しなさい」
息吹を笑わせることに成功した晴明は、息吹から目を話さずに注視している主さまをちらりと見遣ると、主さまの屋敷の前で止まった牛車から息吹を抱き上げて下ろした。
「息吹!あんた戻って来てくれたのかい!?」
涙ぐみながら駆け寄ってきた山姫に抱き着かれた息吹は、懐かしさに背中を撫でてやりながら大好きな母代りに笑いかけた。
「椿さんに会いに来たの。会って話をしなくちゃ」
そう言って、蔵の方へと目を遣った。
「晴明?どうした、一体何が…」
「ああ、これから息吹が椿姫に会いに行く。そなたはここに留まっていてもいいぞ」
「…な、何…?何故息吹が椿姫に…」
主さまの端正な美貌にじわじわと不安の色が浮かび上がる。
すると姿を消した主さまのすぐ脇を、重たい腹を抱えながら息吹が通り過ぎて玄関へと向かった。
本当にいつ産まれてもおかしくない状況なので、もし躓いて転んだりしては大変だとすぐ後を追った主さまは、気配を押し殺して息吹の隣を歩いた。
「ふぅ…重たいなぁ…」
ぽつりと呟いた息吹の額には汗が浮かんでいた。
傍に居てやりたい、できるならばその苦労を少しでも肩代わりしてやりたいと思いながらも何もできずに一緒に牛車に乗り込むと、大きな腹をじっと見つめた。
逆子を無事に産む確率は、思っているよりもかなり低い。
難産になるだろうと晴明に告げられてからずっとそれが気にかかっていた主さまは、百鬼夜行にも身が入らずに銀から毎日のようにからかわれていたが、返す言葉もない。
「椿姫にはとても壮絶な過去があるが、そなたには及ばぬ。だが本人にとっては死を選ばざるを得ない程に苦痛な体験をした。それを踏まえて話を聞きなさい」
「はい。あの…ふたりきりで話をしてもいいの?」
「いや、そなたの体調が気がかり故私は部屋の隅に居るよ。だが話には介入しない。私のことは居ないものとして考えてほしい」
「はい。…取り乱したらごめんなさい」
「いいとも、そなたも苦しんでいるからね。腹の中の孫が驚いて出てこない程度に取り乱しなさい」
息吹を笑わせることに成功した晴明は、息吹から目を話さずに注視している主さまをちらりと見遣ると、主さまの屋敷の前で止まった牛車から息吹を抱き上げて下ろした。
「息吹!あんた戻って来てくれたのかい!?」
涙ぐみながら駆け寄ってきた山姫に抱き着かれた息吹は、懐かしさに背中を撫でてやりながら大好きな母代りに笑いかけた。
「椿さんに会いに来たの。会って話をしなくちゃ」
そう言って、蔵の方へと目を遣った。

