それからは、寝る時は主さまが隣に居るのだと認識した。
姿を見せて隣で寝ていた時は恐らく油断していたのだろうが、それからは全く姿を現さずに気配も押し殺している。
だが、傍に居ると感じる。
「今日はこれにしようかな」
髪紐は、必ず2つ同じ色のものを揃えていた。
主さまと同じ髪紐で髪を結ぶだけで繋がっていると感じられたし、主さまも嫌がらなかったので、いつしかそれが日課になっていた。
引き出しから紫色の髪紐を取り出した息吹は、髪紐で髪を結うと、対となるもう1本の髪紐をさりげなく机の上に置いて席を立った。
もし…
もしも主さまがその場に居たのならば…あの髪紐を手に取ってくれるだろうか?
少し心躍らせながら台所でお湯を沸かしてお茶を淹れると、晴明の部屋に運んで何をするでもなく隣にしばらく座っていた。
晴明はいつも難しい巻物を読んでいるので結局何の役にも立てなかったが、息吹が何だかそわそわしていることに晴明は気付いていた。
「どうしたんだい?体調でも悪いのかい?」
「え?ううん、違います。じゃあ私、お部屋に戻ります」
首を傾げた晴明に手を振って部屋を出ると、なるべく足音を立てないようにして廊下を歩いて自室に繋がる襖を少しだけ開けて中の様子を窺う。
「……あ……無い…」
確かに机の上に置いていた紫の髪紐が…消えている。
胸を押さえて深呼吸をした息吹は、平静を装って部屋へ入ると縁側に座って若葉の髪を櫛で梳いてやった。
…今まさにこの瞬間、主さまはこの部屋にどこかに居るはずだ。
同じ髪紐をつけてくれたのだろうか?
自分に知られるとわかっていても?
じわりと胸が熱くなって黙り込んでしまうと、竹林の中から猫又がひょっこりを顔を出して飛び跳ねるようにして近付いてきた。
「息吹ー!今日も遊びに来たにゃ!」
「猫ちゃん!おはよ、若葉と一緒に遊んでもらっていい?」
「わかったにゃ!」
猫又が部屋の奥の方を見て頭を下げるような仕草をした。
ああ、やっぱり主さまは、この部屋に居る――
それだけで、なんだか不安が少し解消されたような気がした。
姿を見せて隣で寝ていた時は恐らく油断していたのだろうが、それからは全く姿を現さずに気配も押し殺している。
だが、傍に居ると感じる。
「今日はこれにしようかな」
髪紐は、必ず2つ同じ色のものを揃えていた。
主さまと同じ髪紐で髪を結ぶだけで繋がっていると感じられたし、主さまも嫌がらなかったので、いつしかそれが日課になっていた。
引き出しから紫色の髪紐を取り出した息吹は、髪紐で髪を結うと、対となるもう1本の髪紐をさりげなく机の上に置いて席を立った。
もし…
もしも主さまがその場に居たのならば…あの髪紐を手に取ってくれるだろうか?
少し心躍らせながら台所でお湯を沸かしてお茶を淹れると、晴明の部屋に運んで何をするでもなく隣にしばらく座っていた。
晴明はいつも難しい巻物を読んでいるので結局何の役にも立てなかったが、息吹が何だかそわそわしていることに晴明は気付いていた。
「どうしたんだい?体調でも悪いのかい?」
「え?ううん、違います。じゃあ私、お部屋に戻ります」
首を傾げた晴明に手を振って部屋を出ると、なるべく足音を立てないようにして廊下を歩いて自室に繋がる襖を少しだけ開けて中の様子を窺う。
「……あ……無い…」
確かに机の上に置いていた紫の髪紐が…消えている。
胸を押さえて深呼吸をした息吹は、平静を装って部屋へ入ると縁側に座って若葉の髪を櫛で梳いてやった。
…今まさにこの瞬間、主さまはこの部屋にどこかに居るはずだ。
同じ髪紐をつけてくれたのだろうか?
自分に知られるとわかっていても?
じわりと胸が熱くなって黙り込んでしまうと、竹林の中から猫又がひょっこりを顔を出して飛び跳ねるようにして近付いてきた。
「息吹ー!今日も遊びに来たにゃ!」
「猫ちゃん!おはよ、若葉と一緒に遊んでもらっていい?」
「わかったにゃ!」
猫又が部屋の奥の方を見て頭を下げるような仕草をした。
ああ、やっぱり主さまは、この部屋に居る――
それだけで、なんだか不安が少し解消されたような気がした。

