日に日に身体が重たくなってきて、晴明の煎じた薬を飲む回数も増えて行った。
寝返りを打つのも一苦労で、時々晴明が寝返りを打たせてくれる。
元気よくぽこぽこと蹴ってくる我が子の誕生を待ち望みつつ、出産に至るまでこんなに月日がかかることを噛み締めていた息吹は、うとうとして横になっていた。
「…晴明、息吹はどうなんだ」
「順調ではあるが逆子のままのようだな。…それでそなたはいつまで通い続けるつもりだ?」
「……わからない。俺からは息吹に話しかけることができない」
「へたれめ。だが息吹はそなたの存在に気付いているようだが?」
「…なに?俺は姿を完全に消しているはずだぞ」
「だが完全に気配は絶てているのか?何か気付かれるようなことをしたのではないのか」
「……覚えはある」
ひそひそと話している声がしていた。
ここで起きてしまうと恐らく聞けない話の内容なので頑張って寝返りを打とうとすると、肩を誰かが支えてくれた。
「そうだ、そのようにして身体の向きを変えてやってくれ。今やもう膨らんだ腹が邪魔をして寝返りが打てぬのだ」
「…これからは俺がやる。手順を教えろ」
…主さまが寝返りを手伝ってくれる…?
肩を支えてくれている手は優しくて、懐かしい。
つい唇が震えそうになってさりげなく腕で顔を隠すと、主さまの気配が離れていった。
「そなたは最近ほとんど寝ていないのではないのか?そんなことでは百鬼に侮られるぞ」
「連中は俺がここに通い詰めることを賛成してくれている。…逆に毎日息吹はまだ帰って来ないのかとうるさい」
――幽玄町を飛び出して来てしまったので、山姫や雪男に満足にお別れの言葉も言えていない。
猫又は毎日会いに来てくれるが、山姫たちが来ないのは…自分が幽玄町に戻るまで待ってくれているということなのだろうか――?
「それに息吹が寝たら俺も寝る。…姿を消してな」
「安眠できる場所が息吹の傍にしかないのか。不憫な男だ」
「…うるさい」
誰かに頬を撫でられた。
その手を、よく知っていた。
寝返りを打つのも一苦労で、時々晴明が寝返りを打たせてくれる。
元気よくぽこぽこと蹴ってくる我が子の誕生を待ち望みつつ、出産に至るまでこんなに月日がかかることを噛み締めていた息吹は、うとうとして横になっていた。
「…晴明、息吹はどうなんだ」
「順調ではあるが逆子のままのようだな。…それでそなたはいつまで通い続けるつもりだ?」
「……わからない。俺からは息吹に話しかけることができない」
「へたれめ。だが息吹はそなたの存在に気付いているようだが?」
「…なに?俺は姿を完全に消しているはずだぞ」
「だが完全に気配は絶てているのか?何か気付かれるようなことをしたのではないのか」
「……覚えはある」
ひそひそと話している声がしていた。
ここで起きてしまうと恐らく聞けない話の内容なので頑張って寝返りを打とうとすると、肩を誰かが支えてくれた。
「そうだ、そのようにして身体の向きを変えてやってくれ。今やもう膨らんだ腹が邪魔をして寝返りが打てぬのだ」
「…これからは俺がやる。手順を教えろ」
…主さまが寝返りを手伝ってくれる…?
肩を支えてくれている手は優しくて、懐かしい。
つい唇が震えそうになってさりげなく腕で顔を隠すと、主さまの気配が離れていった。
「そなたは最近ほとんど寝ていないのではないのか?そんなことでは百鬼に侮られるぞ」
「連中は俺がここに通い詰めることを賛成してくれている。…逆に毎日息吹はまだ帰って来ないのかとうるさい」
――幽玄町を飛び出して来てしまったので、山姫や雪男に満足にお別れの言葉も言えていない。
猫又は毎日会いに来てくれるが、山姫たちが来ないのは…自分が幽玄町に戻るまで待ってくれているということなのだろうか――?
「それに息吹が寝たら俺も寝る。…姿を消してな」
「安眠できる場所が息吹の傍にしかないのか。不憫な男だ」
「…うるさい」
誰かに頬を撫でられた。
その手を、よく知っていた。

