主さまは今も姿を消してこの屋敷のどこかに居るはずだ。
自室に戻った息吹は、膝に上がってきた若葉をあやしながら机の引き出しから巾着を取り出すと、その中から包み紙に包まれた金平糖を取り出して若葉の口に入れてやった。
「美味しいでしょ?私の大好物なの。それに…」
主さまもなんだかんだ言いつつ甘いものをよく食べていた気がする。
一緒に金平糖を食べたことも何度もあるし、嫌いではないはずだ。
…甘いものは疲れを癒す。
少し考え込んだ息吹は、また引き出しを開けて紙を取り出すと、一言だけ書いてその上に金平糖が入った包み紙を置いた。
「若葉、もうちょっと一緒にお昼寝しよっか」
「あーあーうー」
晴明が調合してくれた薬は抜群の効果を発揮するので、まだ眠気が取れていなかった息吹は床に身体を横たえて瞳を閉じると、すぐ寝てしまった。
――そして代わりに姿を現したのは…主さまだ。
実は部屋の隅に居たのだが、息吹が何かを書いて机の上に置いたのを見ていたので、机に近寄ってみると…
『甘いもの好きでしょ?食べて下さい』
主さまは自身の身体を見下ろして焦っていた。
姿隠しの術はちゃんと効果を発揮しているし、この手紙は…自分に宛てられたものだ。
「…さっき…起きていたのか…?」
駄目だとわかっていても、息吹に触れられずにはいられず、口づけをしてしまった。
寝込みでしかも一方的なものだったとはいえ、それだけで疲れが吹き飛んだ気がしたのに…
「……金平糖、か」
口寂しくなると息吹がよく食べている金平糖。
色とりどりの色で目を楽しませつつよく口にねじ込まれた懐かしい金平糖だ。
「…俺に…くれるのか……?」
これを取ってしまえば、自分がここに居ることを知られてしまう。
しばらく葛藤した主さまは、知られてもいいという思いで懐に包み紙を入れると息吹に近寄って寝顔を見つめると、そのまま屋敷を後にした。
そして夕暮れに起きた息吹は、机の上に置いていたはずの金平糖がないことにすぐ気付いて、あれが勘違いではないのだと知る。
「主さま…やっぱり傍に居るんだ…」
嫌ではなかった。
むしろ――
自室に戻った息吹は、膝に上がってきた若葉をあやしながら机の引き出しから巾着を取り出すと、その中から包み紙に包まれた金平糖を取り出して若葉の口に入れてやった。
「美味しいでしょ?私の大好物なの。それに…」
主さまもなんだかんだ言いつつ甘いものをよく食べていた気がする。
一緒に金平糖を食べたことも何度もあるし、嫌いではないはずだ。
…甘いものは疲れを癒す。
少し考え込んだ息吹は、また引き出しを開けて紙を取り出すと、一言だけ書いてその上に金平糖が入った包み紙を置いた。
「若葉、もうちょっと一緒にお昼寝しよっか」
「あーあーうー」
晴明が調合してくれた薬は抜群の効果を発揮するので、まだ眠気が取れていなかった息吹は床に身体を横たえて瞳を閉じると、すぐ寝てしまった。
――そして代わりに姿を現したのは…主さまだ。
実は部屋の隅に居たのだが、息吹が何かを書いて机の上に置いたのを見ていたので、机に近寄ってみると…
『甘いもの好きでしょ?食べて下さい』
主さまは自身の身体を見下ろして焦っていた。
姿隠しの術はちゃんと効果を発揮しているし、この手紙は…自分に宛てられたものだ。
「…さっき…起きていたのか…?」
駄目だとわかっていても、息吹に触れられずにはいられず、口づけをしてしまった。
寝込みでしかも一方的なものだったとはいえ、それだけで疲れが吹き飛んだ気がしたのに…
「……金平糖、か」
口寂しくなると息吹がよく食べている金平糖。
色とりどりの色で目を楽しませつつよく口にねじ込まれた懐かしい金平糖だ。
「…俺に…くれるのか……?」
これを取ってしまえば、自分がここに居ることを知られてしまう。
しばらく葛藤した主さまは、知られてもいいという思いで懐に包み紙を入れると息吹に近寄って寝顔を見つめると、そのまま屋敷を後にした。
そして夕暮れに起きた息吹は、机の上に置いていたはずの金平糖がないことにすぐ気付いて、あれが勘違いではないのだと知る。
「主さま…やっぱり傍に居るんだ…」
嫌ではなかった。
むしろ――

