主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②

酒呑童子の家探しが始まった。

ただ長い時間椿姫をひとりにさせておくのが心配なので、何度も様子を見に帰ってしまって笑われて――またそれがなんだか嬉しくて…

この気持ちは何だろうかと考えるも結論はでず、日々が過ぎる。


あれから茨城童子はあまり会いに来なくなった。

時々家探しは手伝ってくれるが誠意は感じず、終いにはこちらが怒ってしまって帰れと言ってしまうので結果的にひとりで捜しているのと同じ。


だが何だろう…

家探しが楽しいのは、何だろう?


「椿姫に似合う大きくて人目に触れない場所だ。山に囲まれているのがいい」


気に入った家があれば、家主を襲って食って、我が物にしてきた。

椿姫と暮らしているあのあばら家もただの昼寝用だったので特に外観や内装にこだわったわけでもない。

よくよく見れば壁も天井もぼろぼろで、いつ崩れ落ちてもおかしくはない家だったので早急に探さなければと自然と気も逸る。


『あなたの本懐は百鬼夜行の主を倒すことだ』


茨城童子にそう言われて、忘れていたわけではないが…女にうつつを抜かしているといわれてかっとなった。

うつつを抜かしているのではなく、ただ椿姫がもう少し太ってさらに美味そうになってからだと言い訳をした自分にも、何だか違和感を覚えていた。


「俺は…どうしてしまったんだ?」


――完全に人の姿を保つことができる酒呑童子は人ごみに紛れて大きな屋敷を重点的に見て回っていた。

どこも公家や名家の屋敷で、そういった家を襲えば必ず様子がおかしいことに気付かれて乗り込まれるだろう。

そうではない。

それでは駄目だ。

椿姫には静かで穏やかな時間を――


「ん、ここは……いいな。旧家か」


人ごみから外れて細い路地を歩いていると、塀が高くて竹林に囲まれた屋敷らしきものが目に付いた。

扉の漆喰は傷み、あたかも人が住んでいるような気配はない。


「中へ入ってみよう」


…派手に動けばあの百鬼夜行の主に見つかって、また大量の死者が出る戦いが起きる。

今はその時機ではなく、静かに同志と力を溜めている期間なので、ここに誰も住んでいなくて戦いなど起きないことが望ましい。


「雑草は生えているが…屋敷自体は古くても汚くはない。落ちぶれて捨てられた旧家の家だな。よし、ここにしよう」


踵を返した酒呑童子は急ぎ足であのあばら家のような家に戻る。


とてもとても、悲しいことが起きるとは知らずに――