主さまが毎夜早く帰って来る。
それ自体は嬉しいのだが…どこか安息を得ていない気がするし、常に周囲に注意を払っている気がする。
何かが起こっているのだと察していた息吹は、眠るのが大好きなくせに最近全然寝ていないことを心配して、縁側に座っていた主さまにお茶を出して隣に座った。
「主さま」
「なんだ」
「私最近主さまに“愛してる”って言われてません」
「!ごほ…っ、な…っ、なんだと…!?」
「だから…“愛してる”って言われてません。前は時々言ってくれてたのに、今は全然。夫婦ってそんなもの?」
むせまくって咳き込んでいる主さまの背中を撫でてやりながらも、息吹はなんとか楽しい会話をと思って追及を止めない。
案の定主さまはさっきまで気難しい顔をしていたが、今は耳まで真っ赤にして咳き込んでいた。
「ごほっ。…俺だって…お前に言われてないぞ」
「私から言わなきゃ駄目なの?じゃあ今言おうか?そしたらすぐ言ってくれる?」
…こいつは一体何を言っているんだという目で見られて噴き出した息吹は、主さまの腕に抱き着いてひとつ咳をした。
心配した主さまがすぐに火鉢を引き寄せて着ていた羽織を肩にかけてくれて、ありがとうとお礼を言うと、主さまは目を泳がせながらむっつり。
「……簡単に言っていい言葉じゃない」
「うん、そうだよね。でも言ってくれると嬉しいし、愛されてるって思えるから時々私に言ってあげてね」
口下手で言葉少なな主さまにとっては難しい要求だったが、なんとかかんとか頷いた主さまに納得した息吹は、冬になって冷たい風が吹いている縁側から離れて夫婦共同の部屋に入って敷かれた床に寝転がる。
するとすぐ主さまも入ってきて火鉢だの熱いお茶だの湯たんぽなどを運んできたので、主さまに手を伸ばして隣に誘った。
「主さまが湯たんぽになって」
「…我が儘を言うな」
そう言いながらも隣に来てくれた主さまに抱き着きつつ、聞こえるか聞こえないかの小さな声で顔を伏せたまま囁いた。
「あんまり危ないことしないでね」
「……わかっている。心配するな」
少し膨らみかけた腹を大きな手で撫でてくれた主さま。
魔の手がすぐそこまで迫っていることにも気付かずに、主さまの安息を願いながら瞳を閉じる。
それ自体は嬉しいのだが…どこか安息を得ていない気がするし、常に周囲に注意を払っている気がする。
何かが起こっているのだと察していた息吹は、眠るのが大好きなくせに最近全然寝ていないことを心配して、縁側に座っていた主さまにお茶を出して隣に座った。
「主さま」
「なんだ」
「私最近主さまに“愛してる”って言われてません」
「!ごほ…っ、な…っ、なんだと…!?」
「だから…“愛してる”って言われてません。前は時々言ってくれてたのに、今は全然。夫婦ってそんなもの?」
むせまくって咳き込んでいる主さまの背中を撫でてやりながらも、息吹はなんとか楽しい会話をと思って追及を止めない。
案の定主さまはさっきまで気難しい顔をしていたが、今は耳まで真っ赤にして咳き込んでいた。
「ごほっ。…俺だって…お前に言われてないぞ」
「私から言わなきゃ駄目なの?じゃあ今言おうか?そしたらすぐ言ってくれる?」
…こいつは一体何を言っているんだという目で見られて噴き出した息吹は、主さまの腕に抱き着いてひとつ咳をした。
心配した主さまがすぐに火鉢を引き寄せて着ていた羽織を肩にかけてくれて、ありがとうとお礼を言うと、主さまは目を泳がせながらむっつり。
「……簡単に言っていい言葉じゃない」
「うん、そうだよね。でも言ってくれると嬉しいし、愛されてるって思えるから時々私に言ってあげてね」
口下手で言葉少なな主さまにとっては難しい要求だったが、なんとかかんとか頷いた主さまに納得した息吹は、冬になって冷たい風が吹いている縁側から離れて夫婦共同の部屋に入って敷かれた床に寝転がる。
するとすぐ主さまも入ってきて火鉢だの熱いお茶だの湯たんぽなどを運んできたので、主さまに手を伸ばして隣に誘った。
「主さまが湯たんぽになって」
「…我が儘を言うな」
そう言いながらも隣に来てくれた主さまに抱き着きつつ、聞こえるか聞こえないかの小さな声で顔を伏せたまま囁いた。
「あんまり危ないことしないでね」
「……わかっている。心配するな」
少し膨らみかけた腹を大きな手で撫でてくれた主さま。
魔の手がすぐそこまで迫っていることにも気付かずに、主さまの安息を願いながら瞳を閉じる。

