銀が百鬼夜行を代行してくれたおかげで朝までゆっくり息吹と過ごせたのはいいが…やはり自分以外に百鬼を任せるのはいい気分ではない。
鬼族の正統な長子として生まれたからには当然の義務として百鬼夜行を受け継いだが――表情には現れずとも百鬼たちにはちゃんと愛着はある。
銀はかつて敵対してきた男なので元々任せるのは乗り気ではなかったのだが…いくら息吹と一緒に居たいと思っても、銀に任せるのはこれで最後にしようと決めた。
自分は、息吹と子を守るために、暴れ回る妖を幽玄町に近づけさせないようにする――
それこそが、使命。
「…よく寝れたか?」
「うん、腹巻してるせいもあってかお腹が冷えないし、これがあれば寝相が悪くったって平気」
目を擦りながら起きた息吹を寝転んだままじっと見ていた主さまは、息吹がいつものように庭に出たので後を追いかけて井戸までついて行った。
井戸から水を汲んでやって顔を洗わせて、再び部屋に戻って着替えをして草履を履く息吹――何をしようとしているのか分かった主さまは、息吹の肩を押して縁側に座らせた。
「お前…今から地主神の祠に行くつもりだな?やめろ」
「やだ、行くもん。だって地主神様が授けて下さったんだから。主さま、ちょっと運動した方が赤ちゃんにもいいんだよ?だから大丈夫だってば」
「駄目だ、行くな。今は不安定な時期だ。つわりが来て収まるまではここに居ろ」
ぷうっと頬を膨らませた息吹が抗議をしてくる兆しを見せたので身構えていると、そこにふらりと晴明が現れた。
…いつもより格段に早く現れたので、主さまはいじけたが…息吹は大喜び。
「父様!おはようございます。あのね、地主神様の祠に行きたいのに主さまが反対するの。どうしよう」
「ふむふむ、そなたが心配で仕方がないのだよ。よしわかった、父様がどうにかしてあげよう」
いつものように真っ白な直衣姿の晴明が唇に指をあてて口笛を吹くと、ひゅっと風の鳴る音がしたと思うと庭に八咫烏が舞い降りた。
晴明は八咫烏の嘴を撫でてやりながら、にっこり。
「これに乗って行けばいい。準備を手伝ってあげようか」
「うん!父様ありがとう」
「……俺も行くぞ」
やきもちを妬いた主さまがぼそっと呟くと、晴明がにやりと笑ったので今日自分をいじめる気なのだと肩を落とした主さまは、ふてくされてごろんと縁側に寝転んだ。
鬼族の正統な長子として生まれたからには当然の義務として百鬼夜行を受け継いだが――表情には現れずとも百鬼たちにはちゃんと愛着はある。
銀はかつて敵対してきた男なので元々任せるのは乗り気ではなかったのだが…いくら息吹と一緒に居たいと思っても、銀に任せるのはこれで最後にしようと決めた。
自分は、息吹と子を守るために、暴れ回る妖を幽玄町に近づけさせないようにする――
それこそが、使命。
「…よく寝れたか?」
「うん、腹巻してるせいもあってかお腹が冷えないし、これがあれば寝相が悪くったって平気」
目を擦りながら起きた息吹を寝転んだままじっと見ていた主さまは、息吹がいつものように庭に出たので後を追いかけて井戸までついて行った。
井戸から水を汲んでやって顔を洗わせて、再び部屋に戻って着替えをして草履を履く息吹――何をしようとしているのか分かった主さまは、息吹の肩を押して縁側に座らせた。
「お前…今から地主神の祠に行くつもりだな?やめろ」
「やだ、行くもん。だって地主神様が授けて下さったんだから。主さま、ちょっと運動した方が赤ちゃんにもいいんだよ?だから大丈夫だってば」
「駄目だ、行くな。今は不安定な時期だ。つわりが来て収まるまではここに居ろ」
ぷうっと頬を膨らませた息吹が抗議をしてくる兆しを見せたので身構えていると、そこにふらりと晴明が現れた。
…いつもより格段に早く現れたので、主さまはいじけたが…息吹は大喜び。
「父様!おはようございます。あのね、地主神様の祠に行きたいのに主さまが反対するの。どうしよう」
「ふむふむ、そなたが心配で仕方がないのだよ。よしわかった、父様がどうにかしてあげよう」
いつものように真っ白な直衣姿の晴明が唇に指をあてて口笛を吹くと、ひゅっと風の鳴る音がしたと思うと庭に八咫烏が舞い降りた。
晴明は八咫烏の嘴を撫でてやりながら、にっこり。
「これに乗って行けばいい。準備を手伝ってあげようか」
「うん!父様ありがとう」
「……俺も行くぞ」
やきもちを妬いた主さまがぼそっと呟くと、晴明がにやりと笑ったので今日自分をいじめる気なのだと肩を落とした主さまは、ふてくされてごろんと縁側に寝転んだ。

