息吹が妊娠しているとわかってからが、大変だった。
いつもは百鬼夜行が始まってから途中合流したりしている百鬼たちもが庭に集まってひしめき、雛人形のように何枚もの座布団を重ねて座らされた息吹に声をかけようと押し合いへし合い。
彼らにとっては主さまが妻を娶ったこと自体青天の霹靂だったのに、妻は息吹で――しかも妊娠したという。
喜びは二重にも三重にもなり、夕暮れになって少し涼しくなったので厚着をさせられて座らされた息吹は妊娠したことを実感する時間もなく取り囲まれていた。
「主さまの子か!息子だったどうなる?主さま念願の隠居か!」
「いやいや、力がなければ俺たちを率いる資格もない。だがしかし…息吹の子なんだから可愛いだろうなあ。早く抱っこしてやりたいなあ」
「…俺に似ていたら可愛くない、と?」
じわりと殺気を放つ主さまに冷や汗たらたらの百鬼たちはそれでも満員状態になった庭で大笑いをして、山姫がせっせと作る料理や自らが持ち込んだ食材で宴を始めてしまった。
だがそのお祝いの席でむっつりしていたのは――雪男だ。
「雪ちゃんは祝ってくれないの?赤ちゃん…できない方がよかった?」
「!そ、そんなこと言ってないだろ。…少し複雑なだけだし」
「生まれたら抱っこしてくれるでしょ?私が小さかった時に色々教えてくれたように可愛がってくれるでしょ?」
「そりゃまあ…。あーあ、妊娠かあ…俺が妊娠させたか……いててっ!」
主さまに思いきり耳を引っ張られた雪男は主さまの手がひんやりしていたので火傷をすることなく、目をぱちくり。
極度の緊張がまだ続いていた主さまは、懐から煙管を取り出そうとしてはっとすると、再び引っ込めた。
…息吹の体調を気遣って。
息吹に話しかけたくても囲まれているのでいらいらしていると、裏山の方から晴明がのんびりと歩み寄って来た。
「おお、やっているな。妊娠で決まりか」
「父様!どこに行ってたのっ?」
「やあ、地主神にお参りをね。時期的には息吹がお参りを始めてからだろう?これは運命のような気がしたから先程までずっと祝詞をあげていたのだよ。息吹…おめでとう、夢が叶ったな」
「父様……うん…隣に来て」
晴明に孫を見せてやれる――
嬉しいながらも少し寂しさを感じさせる微笑を浮かべている晴明を隣に座らせた息吹は、腕に抱き着いてもたれ掛った。
「私…実家で産みたいな。駄目?」
断るはずがなかった。
いつもは百鬼夜行が始まってから途中合流したりしている百鬼たちもが庭に集まってひしめき、雛人形のように何枚もの座布団を重ねて座らされた息吹に声をかけようと押し合いへし合い。
彼らにとっては主さまが妻を娶ったこと自体青天の霹靂だったのに、妻は息吹で――しかも妊娠したという。
喜びは二重にも三重にもなり、夕暮れになって少し涼しくなったので厚着をさせられて座らされた息吹は妊娠したことを実感する時間もなく取り囲まれていた。
「主さまの子か!息子だったどうなる?主さま念願の隠居か!」
「いやいや、力がなければ俺たちを率いる資格もない。だがしかし…息吹の子なんだから可愛いだろうなあ。早く抱っこしてやりたいなあ」
「…俺に似ていたら可愛くない、と?」
じわりと殺気を放つ主さまに冷や汗たらたらの百鬼たちはそれでも満員状態になった庭で大笑いをして、山姫がせっせと作る料理や自らが持ち込んだ食材で宴を始めてしまった。
だがそのお祝いの席でむっつりしていたのは――雪男だ。
「雪ちゃんは祝ってくれないの?赤ちゃん…できない方がよかった?」
「!そ、そんなこと言ってないだろ。…少し複雑なだけだし」
「生まれたら抱っこしてくれるでしょ?私が小さかった時に色々教えてくれたように可愛がってくれるでしょ?」
「そりゃまあ…。あーあ、妊娠かあ…俺が妊娠させたか……いててっ!」
主さまに思いきり耳を引っ張られた雪男は主さまの手がひんやりしていたので火傷をすることなく、目をぱちくり。
極度の緊張がまだ続いていた主さまは、懐から煙管を取り出そうとしてはっとすると、再び引っ込めた。
…息吹の体調を気遣って。
息吹に話しかけたくても囲まれているのでいらいらしていると、裏山の方から晴明がのんびりと歩み寄って来た。
「おお、やっているな。妊娠で決まりか」
「父様!どこに行ってたのっ?」
「やあ、地主神にお参りをね。時期的には息吹がお参りを始めてからだろう?これは運命のような気がしたから先程までずっと祝詞をあげていたのだよ。息吹…おめでとう、夢が叶ったな」
「父様……うん…隣に来て」
晴明に孫を見せてやれる――
嬉しいながらも少し寂しさを感じさせる微笑を浮かべている晴明を隣に座らせた息吹は、腕に抱き着いてもたれ掛った。
「私…実家で産みたいな。駄目?」
断るはずがなかった。

