薬師は幽玄町で名医と言われる腕利きを呼んだ。
ただ当事者の息吹はぽかんとしているばかりで、雪男は唖然としているし、山姫は庭を行ったり来たりしていて薬師の到着を心待ちにしていた。
そして主さまは――
「…い、息吹…その…本当なのか…?」
「そんなこと聞かれたって私にもわかんないし…父様…父様はどこ?」
こういう時どうしても晴明に頼ってしまう息吹が不安そうな声を上げると、主さまは客間に息吹を連れ込んでせかせか床を敷くと、寝かしつけた。
「じっとしていろ。……遅いな、誰か急がせろ!」
庭をうろついていた猫又が屋敷を飛び出して行ったが、無理矢理寝かされた息吹は唇を尖らせて猛抗議。
「私どこも悪くないもん。最近色々ありすぎたからちょっと体調がおかしいだけで…」
「お前が勝手に判断するな。もし子ができていたら…しばらくの間は裏山には行かせない。ここでゆったり過ごせ。いいな?」
「そんな…ひどいよ私が何しようと勝手でしょ?主さまのば……」
夫婦喧嘩に発展しようとしていた時、猫又に乗ったままの真っ白な髭を蓄えた薬師が連れてこられた。
主さまの屋敷に人が招かれるのはとても珍しいことなので、薬師はおどおどしながら息吹の前に座ると、主さまにじっと見つめられて冷や汗。
「早くしろ。早く診察を…」
「な、内診もございますのでお席を外して頂きたく…」
「内診するまではここに居る。早くしろ」
苛立つ主さまに再三急かされて冷や汗が止まらない薬師は、息吹の手を取って脈を測りながら診察を始めた。
「最近胸やけがしたりいたしますか?」
「うーん…はい、胃もたれみたいな…ただの食べすぎだと思うんですけど」
「最近いらいらしたり眠れなかったりいたしますか?」
「ううううん…はい。でもそれは心配事があったからで…」
「月のものはどの程度遅れていますか?」
「二月は…。私…病気なんですか?」
息吹の不安げな声を受けて、薬師が主さまに退席を促す。
さすがに内診の場に留まるつもりはなかったので重たい腰を上げて客間を出た主さまは、閉めた襖の前――廊下を行ったり来たりして落ち着きなく動き回っていた。
「主さま少しは落ち着いて下さいよ。ああもう晴明は一体どこに…」
山姫と2人で廊下をうろうろしていると――襖が開いて薬師が顔を出した。
主さまはかつてないほど緊張して身を強張らせた。
ただ当事者の息吹はぽかんとしているばかりで、雪男は唖然としているし、山姫は庭を行ったり来たりしていて薬師の到着を心待ちにしていた。
そして主さまは――
「…い、息吹…その…本当なのか…?」
「そんなこと聞かれたって私にもわかんないし…父様…父様はどこ?」
こういう時どうしても晴明に頼ってしまう息吹が不安そうな声を上げると、主さまは客間に息吹を連れ込んでせかせか床を敷くと、寝かしつけた。
「じっとしていろ。……遅いな、誰か急がせろ!」
庭をうろついていた猫又が屋敷を飛び出して行ったが、無理矢理寝かされた息吹は唇を尖らせて猛抗議。
「私どこも悪くないもん。最近色々ありすぎたからちょっと体調がおかしいだけで…」
「お前が勝手に判断するな。もし子ができていたら…しばらくの間は裏山には行かせない。ここでゆったり過ごせ。いいな?」
「そんな…ひどいよ私が何しようと勝手でしょ?主さまのば……」
夫婦喧嘩に発展しようとしていた時、猫又に乗ったままの真っ白な髭を蓄えた薬師が連れてこられた。
主さまの屋敷に人が招かれるのはとても珍しいことなので、薬師はおどおどしながら息吹の前に座ると、主さまにじっと見つめられて冷や汗。
「早くしろ。早く診察を…」
「な、内診もございますのでお席を外して頂きたく…」
「内診するまではここに居る。早くしろ」
苛立つ主さまに再三急かされて冷や汗が止まらない薬師は、息吹の手を取って脈を測りながら診察を始めた。
「最近胸やけがしたりいたしますか?」
「うーん…はい、胃もたれみたいな…ただの食べすぎだと思うんですけど」
「最近いらいらしたり眠れなかったりいたしますか?」
「ううううん…はい。でもそれは心配事があったからで…」
「月のものはどの程度遅れていますか?」
「二月は…。私…病気なんですか?」
息吹の不安げな声を受けて、薬師が主さまに退席を促す。
さすがに内診の場に留まるつもりはなかったので重たい腰を上げて客間を出た主さまは、閉めた襖の前――廊下を行ったり来たりして落ち着きなく動き回っていた。
「主さま少しは落ち着いて下さいよ。ああもう晴明は一体どこに…」
山姫と2人で廊下をうろうろしていると――襖が開いて薬師が顔を出した。
主さまはかつてないほど緊張して身を強張らせた。

