晴明が大量の饅頭を持参して主さまの屋敷に現れた時、息吹はまだ主さまに捕らわれていた。
朝までずっと腕の中に抱きしめられていたのであちこち身体が痛かったが、ちょっとでも身動きをすると主さまはもっと強い力で抱き込んでくる。
仕方なく主さまの身体に腕を回して抱き着くようにして寝ていたのだが――屋敷の前で牛車が止まる音がすると、息吹は眠っている主さまの頬をぺちぺち叩いて起こそうとした。
「主さま、父様が来たから起きようよ。だらしないって言われちゃうよ」
「……勝手に…言わせておけ。この部屋には誰も入って来れない。待たせておけばいい…」
「でも私地主神様の所にも行きたいし…お腹空いたし…」
息吹は人なので腹が空く。
そう言われてしまうとこれ以上我が儘を言えるはずもなく、仕方なく息吹を離すと息吹は鏡台の前に座って櫛で髪を梳き、乱れた浴衣を着直していた。
主さまは横向きになって頬杖を突きながらそんな息吹を見ていたが、昨晩は…ちょっと燃え上がってしまったので息吹の身体が心配で言いにくそうに口をもごもご。
「息吹…その…身体は大丈夫か」
「え?なんのこと?……あ……う、うん…多分大丈夫。主さまの馬鹿、壊れちゃうかと思った」
「…………す、すまない。…朝餉は俺も一緒に食う。用意は山姫にさせてお前は顔を洗って来い」
「うん。わあ、いいお天気!でもちょっと涼しくなってきたね」
障子を開けて大きく伸びをしている息吹の前に晴明がひょっこりと現れた。
その手には大きな風呂敷を持っていたので息吹は縁側に座ってまず晴明に朝の挨拶を交わすと、首を傾けた。
「父様…それはなあに?」
「これかい?これは平安町で有名な饅頭屋の菓子だよ。そなたにと思って買ってきたのだ。全部そなたが食べなさい」
「全部?でも…すごい量だよ?みんなで…」
「いや、そなただけで。これを食べて体力をつけなさい。あと重たいものも持っては駄目だ。あと…」
「晴明…ちょいとあんた…」
山姫に窘められてはっとなった晴明は、のそりと出て来た主さまにも不可解な表情をされたので咳払いをして息吹の膝に風呂敷を乗せた。
「では皆で食後に食べようか。その後軽い運動も兼ねて父様と一緒に地主神の祠へ行こう」
「はい!」
嬉しそうに返事をした息吹にむかっとした主さまだったが、晴明には勝てないのでむっつりしておいた。
朝までずっと腕の中に抱きしめられていたのであちこち身体が痛かったが、ちょっとでも身動きをすると主さまはもっと強い力で抱き込んでくる。
仕方なく主さまの身体に腕を回して抱き着くようにして寝ていたのだが――屋敷の前で牛車が止まる音がすると、息吹は眠っている主さまの頬をぺちぺち叩いて起こそうとした。
「主さま、父様が来たから起きようよ。だらしないって言われちゃうよ」
「……勝手に…言わせておけ。この部屋には誰も入って来れない。待たせておけばいい…」
「でも私地主神様の所にも行きたいし…お腹空いたし…」
息吹は人なので腹が空く。
そう言われてしまうとこれ以上我が儘を言えるはずもなく、仕方なく息吹を離すと息吹は鏡台の前に座って櫛で髪を梳き、乱れた浴衣を着直していた。
主さまは横向きになって頬杖を突きながらそんな息吹を見ていたが、昨晩は…ちょっと燃え上がってしまったので息吹の身体が心配で言いにくそうに口をもごもご。
「息吹…その…身体は大丈夫か」
「え?なんのこと?……あ……う、うん…多分大丈夫。主さまの馬鹿、壊れちゃうかと思った」
「…………す、すまない。…朝餉は俺も一緒に食う。用意は山姫にさせてお前は顔を洗って来い」
「うん。わあ、いいお天気!でもちょっと涼しくなってきたね」
障子を開けて大きく伸びをしている息吹の前に晴明がひょっこりと現れた。
その手には大きな風呂敷を持っていたので息吹は縁側に座ってまず晴明に朝の挨拶を交わすと、首を傾けた。
「父様…それはなあに?」
「これかい?これは平安町で有名な饅頭屋の菓子だよ。そなたにと思って買ってきたのだ。全部そなたが食べなさい」
「全部?でも…すごい量だよ?みんなで…」
「いや、そなただけで。これを食べて体力をつけなさい。あと重たいものも持っては駄目だ。あと…」
「晴明…ちょいとあんた…」
山姫に窘められてはっとなった晴明は、のそりと出て来た主さまにも不可解な表情をされたので咳払いをして息吹の膝に風呂敷を乗せた。
「では皆で食後に食べようか。その後軽い運動も兼ねて父様と一緒に地主神の祠へ行こう」
「はい!」
嬉しそうに返事をした息吹にむかっとした主さまだったが、晴明には勝てないのでむっつりしておいた。

