ずっと不安にさせていたため、いつも快活な息吹が痩せてしまっていることにかなり心を痛めていた主さまは、ひとしきり息吹との逢引きを楽しんだ後屋敷へと戻り、庭掃除をしていた山姫に声をかけた。
「何か食い物を大量に作れ。息吹の腹が破裂するまで食わせろ」
「一体なんなんですかいきなり。わかりましたけど息吹はひとりで食事をするのは嫌がりますから主さまも付き合ってやってくださいよ」
「…わかった」
主さまが大広間で山姫と話しているうちに、息吹は庭の花に水遣りをしながら番傘を差して手桶を持ってくれている雪男にそっと声をかけた。
「雪ちゃん…私離縁はしないから。心配かけてごめんね」
「ちぇっ、俺は心配なんかしてないし。お前が主さまと離縁したら俺と一緒になって家庭を持てたらなって…」
「うん、でも雪ちゃんには私よりお似合いの人がきっと現れるからゆっくり待ってればいいと思うよ」
「…そんなの一生現れねえし」
ぼそっと呟いたが息吹には届かず、水を遣って鮮やかになった花々を満足そうに眺めている息吹の頭を小突いた雪男は、縁側でのほほんと饅頭を食べている晴明ににじり寄る。
「おい晴明。仲直りしまったじゃないかよ」
「私のせいだと言うのかい?そなたたちはどうしても私を悪人にしたがる。私は息吹が離縁を望めばそのように動くし、望まなければまたそれを応援する。つまり娘贔屓ということだよ」
「ふん、ったく…。…まあ息吹が笑ってるからいっか。また虎視眈々と狙いますかー」
不吉な言葉と共に庭の奥へとぷらぷら歩いて行った雪男を見送った晴明は、食卓に次々と並べられる大量の食事に主さまの思惑を読み取り、声を上げて笑った。
「ははは、息吹を丸々太らせて齧るわけだな?そなたは本当にわかりやすい」
「何故あんなに痩せている?ちゃんと食わせていたのか?」
「もちろんだとも。ただあの子の心労が激しくてねえ、私にはどうしようもできなかったのだ。さてどこのどいつの仕業なのか」
「……」
反論しようもなく敢え無く撃沈した主さまは、縁側に戻って来た息吹を呼び寄せて隣に座らせた。
「わ、すごいお料理の数…」
「全部食え。そしてすぐ太れ。俺を心配させない程度に太れ」
悩みが解消されてなんだかお腹が空いた息吹は、大きく頷いて腕まくりをした。
「よーし、いただきまーす!」
主さまとの日常が戻って来る。
「何か食い物を大量に作れ。息吹の腹が破裂するまで食わせろ」
「一体なんなんですかいきなり。わかりましたけど息吹はひとりで食事をするのは嫌がりますから主さまも付き合ってやってくださいよ」
「…わかった」
主さまが大広間で山姫と話しているうちに、息吹は庭の花に水遣りをしながら番傘を差して手桶を持ってくれている雪男にそっと声をかけた。
「雪ちゃん…私離縁はしないから。心配かけてごめんね」
「ちぇっ、俺は心配なんかしてないし。お前が主さまと離縁したら俺と一緒になって家庭を持てたらなって…」
「うん、でも雪ちゃんには私よりお似合いの人がきっと現れるからゆっくり待ってればいいと思うよ」
「…そんなの一生現れねえし」
ぼそっと呟いたが息吹には届かず、水を遣って鮮やかになった花々を満足そうに眺めている息吹の頭を小突いた雪男は、縁側でのほほんと饅頭を食べている晴明ににじり寄る。
「おい晴明。仲直りしまったじゃないかよ」
「私のせいだと言うのかい?そなたたちはどうしても私を悪人にしたがる。私は息吹が離縁を望めばそのように動くし、望まなければまたそれを応援する。つまり娘贔屓ということだよ」
「ふん、ったく…。…まあ息吹が笑ってるからいっか。また虎視眈々と狙いますかー」
不吉な言葉と共に庭の奥へとぷらぷら歩いて行った雪男を見送った晴明は、食卓に次々と並べられる大量の食事に主さまの思惑を読み取り、声を上げて笑った。
「ははは、息吹を丸々太らせて齧るわけだな?そなたは本当にわかりやすい」
「何故あんなに痩せている?ちゃんと食わせていたのか?」
「もちろんだとも。ただあの子の心労が激しくてねえ、私にはどうしようもできなかったのだ。さてどこのどいつの仕業なのか」
「……」
反論しようもなく敢え無く撃沈した主さまは、縁側に戻って来た息吹を呼び寄せて隣に座らせた。
「わ、すごいお料理の数…」
「全部食え。そしてすぐ太れ。俺を心配させない程度に太れ」
悩みが解消されてなんだかお腹が空いた息吹は、大きく頷いて腕まくりをした。
「よーし、いただきまーす!」
主さまとの日常が戻って来る。

