息吹の手を引いた主さまが部屋から出て来ると、山姫たちは揃って縁側ににじり寄って来た。
もしや本当に離縁するのでは――不安と期待が入り混じった表情を見せる面々には目もくれない主さまは、息吹をひょいっと腕に抱えて晴明に宣言した。
「少し出かける。ちなみに離縁はしない。ついでに言うとお前の文が話をこじらせた。後で覚えておけ」
「ふむ、私は重大な話がある、と書いただけであって、それを深読みしたのはそなたであることを忘れるな。私が悪いと思うか?」
「……」
結局口では晴明を捻じ伏せることは適わず、くすくす笑った息吹の頭を軽く小突いた主さまは空を駆け上がって一路向日葵の咲き誇る山奥へと向かった。
その間息吹はずっと無言で、無性にどきどきしてしまった主さまもまた話しかけることができずに無言。
久しぶりに間近で見た息吹からは良い香りがして、また噛みつきたい衝動に襲われながらもなんとか堪えて黄金の花畑へとたどり着いた。
「…ここでなら落ち着いて話ができる」
「話ならもうしたでしょ?私…ちゃんとわかったから大丈夫。主さま…離れてる間寂しかった?私は…寂しかったよ」
素直に想いを口に乗せる息吹が真っ直ぐ見つめてきたので恥ずかしくなった主さまは袖で顔を隠しながら背中を向けてその場にどすんと座る。
息吹は主さまの細いけれど大好きな背中にぴったりくっついて頬を寄せると小さく息をついた。
「………お…俺も…」
「うん…ありがとう」
全て言い切っていないのに何を言いたいのか先を読んでくれた息吹が腰に手を回してきたので、その細くて小さくて白い手をきゅっと握った主さまは、顔が真っ赤になっているのを自覚しながら深い息をつく。
「…俺はどうしてお前のことになると駄目な男になってしまうのか…」
「全然駄目じゃないよ。主さま…私は主さまが居ないと駄目。女たらしでどうしようもなくても好きなの。主さまのお屋敷に戻ってもいい?また一緒に住んでも…」
「お前は俺の妻だ。一緒に住まずして何が夫婦だ?…戻って来い」
すんと鼻を鳴らした息吹が笑った気配がしたので、息吹の細い腰を抱いて一緒に寝転がり、満開の向日葵を見上げながら夏の終わりを感じて瞳を閉じた。
「お前が居ない間はまるで地獄だった。もう…味わいたくない」
「うん…。ごめんね主さま」
頬を寄せて、唇を重ねる。
大切なものがようやく戻って来た。
もしや本当に離縁するのでは――不安と期待が入り混じった表情を見せる面々には目もくれない主さまは、息吹をひょいっと腕に抱えて晴明に宣言した。
「少し出かける。ちなみに離縁はしない。ついでに言うとお前の文が話をこじらせた。後で覚えておけ」
「ふむ、私は重大な話がある、と書いただけであって、それを深読みしたのはそなたであることを忘れるな。私が悪いと思うか?」
「……」
結局口では晴明を捻じ伏せることは適わず、くすくす笑った息吹の頭を軽く小突いた主さまは空を駆け上がって一路向日葵の咲き誇る山奥へと向かった。
その間息吹はずっと無言で、無性にどきどきしてしまった主さまもまた話しかけることができずに無言。
久しぶりに間近で見た息吹からは良い香りがして、また噛みつきたい衝動に襲われながらもなんとか堪えて黄金の花畑へとたどり着いた。
「…ここでなら落ち着いて話ができる」
「話ならもうしたでしょ?私…ちゃんとわかったから大丈夫。主さま…離れてる間寂しかった?私は…寂しかったよ」
素直に想いを口に乗せる息吹が真っ直ぐ見つめてきたので恥ずかしくなった主さまは袖で顔を隠しながら背中を向けてその場にどすんと座る。
息吹は主さまの細いけれど大好きな背中にぴったりくっついて頬を寄せると小さく息をついた。
「………お…俺も…」
「うん…ありがとう」
全て言い切っていないのに何を言いたいのか先を読んでくれた息吹が腰に手を回してきたので、その細くて小さくて白い手をきゅっと握った主さまは、顔が真っ赤になっているのを自覚しながら深い息をつく。
「…俺はどうしてお前のことになると駄目な男になってしまうのか…」
「全然駄目じゃないよ。主さま…私は主さまが居ないと駄目。女たらしでどうしようもなくても好きなの。主さまのお屋敷に戻ってもいい?また一緒に住んでも…」
「お前は俺の妻だ。一緒に住まずして何が夫婦だ?…戻って来い」
すんと鼻を鳴らした息吹が笑った気配がしたので、息吹の細い腰を抱いて一緒に寝転がり、満開の向日葵を見上げながら夏の終わりを感じて瞳を閉じた。
「お前が居ない間はまるで地獄だった。もう…味わいたくない」
「うん…。ごめんね主さま」
頬を寄せて、唇を重ねる。
大切なものがようやく戻って来た。

