彼は私の制服に気づく。

「うちの制服・・・・__?」

彼はそれを見るなりため息をつく。

「お化けじゃ・・ないのか・・・。」

私はようやく正気を取り戻していく・・・。どうやら胸の苦しみも収まっているようだ。

「え、えと・・・・・、もしかしてお化けって私のことですか・・・・?」

恐る恐る彼に聞いてみる。

「他に誰がいるんだよ・・・。」

「で、ですよねぇ・・・・、ってな、な、何で私がお化けなんですかっ!?」

思わずノリツッコミしてしまう私__。

「なんでって・・、アンタが怖かったから。」

「ヒドイッ!!??」

彼のことを失礼な人だと思ったが、私はさっきの状況を彼視点で想像してみることにした。

確かに前髪と横髪を下に垂れ下げて微動だにしなかったら疑われるのも仕方ないかも・・・・・。

「その・・・・す、すみません・・・。」

つい私は彼に謝ってしまう。彼の方はそんなことはどうでもいいと言わんばかりに質問を再開する。

「ところでアンタさ・・・うちの生徒?」

「はっ、はい!!泉の森学園2-10組、出席番号19番の鷹森 美鈴(たかもり みすず)ですっ!!!」

私は緊張してしまい、言わなくていいことまで話してしまった。

な、ななな何を言っているんだ私はぁぁぁ!!!!!そんなことまで言わなくていいのに!!!

そんな彼は私の無駄な自己紹介を聞いて____。

「たかもり・・・・。」

彼は私の名前に聞き覚えがあるかのようにそう呟く。

「あ、あの・・・・。」

「俺が今言ってたこと全部忘れて。」

「えぇっ!!??」

そんな無茶なっと続きを言おうとするが遮られる__。

「[ワスレテクレ・・_____。]」

「っ・・・・・___!!!!」

私は首を縦に振ることしか出来なかった。さっきまで海堂 悠(かいどう ゆう)という男がどういう人かを忘れていたが今の言葉の重さを感じることで思い出したのだった。

そう・・・、私は忘れていた・・・。彼がどんな人なのかを・・・___。重い・・、彼の言葉が耐えられない程重い。催眠術かオカルト系の魔術なのかは知らないけど・・これじゃあ・・・・___。

「・・・・・・。」

私はその命令に対して頷くことしか[許されて]いなかった。

「よし・・・、それじゃあ俺、行くから・・___。」

そう言って彼は階段の方へゆっくりと向かって行く。私はその場から動く事ができなかった。

「・・・・・・・・・・。」

私は声を出そうとするが上手く声が出せない、口が開かない。ただ出来ることといえば[あの時]のように彼の寂しそうな背中を目で追うことだけ・・・。彼の言葉の意味はここで自分と会ったこと全てを忘れろということ。ここで私は彼に会わなかった、ここで彼に話し掛けられなかった。ここで彼の話しを、声を聞かなかった。そして____。

・・・・・・_______。

彼の寂しそうな表情を思い出し私はまた顔を俯けてしまう。彼が一歩づつ私から遠のいていく度に私との距離の差が一気に広がってこのまま彼を行かせてしまったら一生彼に届くことがなくなってしまうような気がした。が、足が前に出ない。

そうだよ・・・。私は今日、海堂くんを見ることなんてなかった。それでいいじゃない・・・・。だから、彼と関わることはもう・・・・_____。

私はそう思いかけて、何かを忘れている事に気づく。

あっ・・・!?告白してた人の名前!!!

私は本題をすっかり聞き忘れていたことを思い出し上手く動かすことが出来ないでいる足を気力で1歩、2歩と前へ前進させる。そして私は彼の背中を追いかけ始める___。

「ま、まって___!!」

開かなかった口も次第に開くようになった私は彼とあんなに開いていた気がした距離をどんどん縮めていく_____。

もう少し_____。

私の足は早歩きから駆け足となっていきもう止まることを知らない。

あともう少し______!!!!!

私は大きく腕を伸ばし彼の肩をつかもうとするが_____。

「えっ!!?っわぷ!!!!」

彼が急に止まり振り向くので私は急に止まることが出来ず、彼の胸に飛び込むようなかたちとなってしまった_____。

「っ・・・・・・・・・・・・・____。」

彼も多少驚いた表情をみせるが、彼はそのまま胸の中に飛び込んできた私を無言で凝視している。私はあまりの恥ずかしさに足が竦んでしまい彼の胸から離れることが出来ない。

わわわ、わわわわわわわわ!!!!!!!!

私の顔がみるみる赤くなっていき思考が停止してしまう。時間にしてほんの十数秒程であったが私にとっては何分にも感じられた。彼の魅力あふれる匂いが私の鼻へと直に入っていき、男のガッチリした胸板の感触を頬全体で感じとり、彼の体の温もりがシャツ一枚越しから私に伝わってくる。私はそんななか、いろんな意味で体全体が熱くなっていた___。

こんなに熱くなってたら絶対海堂くんに伝わっちゃうよぉ!!

「なあ・・・・・鷹森・・・・_____。」

そんな私にお構いなく海堂くんは話し始めるが彼は思いつめたような声で私の耳元で囁く。

「____人であるためには・・・・どうしたらいいんだ・・・・・・___。」

「_____ぇっ・・・・_____?」

サーーーー。

また彼の言葉に応えるかのように夜桜が吹き乱れる___。

私は彼の言っている意味が理解出来ないでいたが彼の言葉が私の頭の奥に深く響き渡っていった・・・・・____。

また数秒程間が空いてしまうが私はその言葉のおかげで正常を取り戻していく___。

彼は今、きっと私の返答を待っているのことだろう・・・・___。しかし私はその質問に答えることはない。そもそも私には彼の質問の意味すら分かっていないのだから・・・_____。

「・・・・・そうか____。」

彼は自分で勝手に納得して私を胸の中から優しく引き剥がした。私は彼の顔を盗み見たがまた一層寂しさの色が濃くなっていたような感じがした。いや、寂しさだけではなく彼の悲しみ、憎しみ、苦しみなどの不の感情が私の中に流れていくような感じさえした。

「じゃあ・・・・・___。」

私はまたてっきり忘れてくれと言われるものだと思っていたが、彼は別れの挨拶を残しこの場を後にして去っていった___。

私の足はもう動くことは無い___。

そして・・・私はいつまでも彼の寂しそうな後ろ姿を見えなくなるまで見送った_______。