刻々と時間が過ぎていくなか、私は海堂くんの姿に目が離せないでいた__。

彼は小さな本を黙々と読み続ける。

何をしているんだろう私は・・・・。幸い海堂くんは本に夢中で気づいていないけど、いつかは気づかれて怪しまれてしまう!

私はとっくのとうに間食を終えていた。いつも通りこの場を立ち去ればいい。しかし、シーソー台から腰を上げることがどうしても出来ない。その答えはとても簡単で複雑・・・・、それは彼がいつもなら私が座っているこの公園のベンチに腰を下ろしているからだ。答えは簡単に頭の中に浮かんでくる。でも、その理由や根拠は?と聞かれたら口が塞がってしまう。別に私の縄張りが取られたから彼に対してとやかく言おうというわけではない。告白していた人の名前を聞くため?それも違う・・・。それじゃあ何故?始業式と[あの時]のような[許される]、[許されない]という感じで動けないわけでは全くない。ただ私がそうしていたかったから・・・・でもそれじゃあ理由になっていない。考えれば考えるほど頭が真っ白になり胸が苦しくなっていく。

・・・・何で苦しくなるの___?

私は苦しくなった胸を手で押さえつける。

[あの時]の感覚と同じで胸がくるしい・・・、でもなんで?あの時は彼女の気持ちと同調してしまっただけのはずなのに・・___。

私はまた答えの出すことが出来ない難問を考え始める___。

_時刻は6時を過ぎ、日は沈み切ってしまった。私の胸の苦しさが癒えることは無い。彼は暗くなったことに気づきようやく読書をやめる。そして____。

「・・・・・・・・・。」

彼が私に気づきこちらの様子を伺っている。私は頭をうつむかせ彼から目を背ける。

どうしよう・・・・・完全に逃げ遅れてしまった!?!?海堂くんがじっとこっちを見てる!!絶対怪しまれてるよーーーー!!!

「・・・・・・・・・・。」

彼のじとーーーーーーーっと冷めた視線がいつまでも私に向けられる。本をしまいながらも目線を外すことはない。

な、なんなんだこの状況は・・・・!?まるで蛇(海堂くん)とアルマジロ(私)のような状況みたい・・・・。で、でもまだ何か策があるはず!!!!考えるんだ私ぃ、知恵を振り絞るんだ___!!!!

A・諦める。B・逃げる。C・言い訳をする。D・襲いかかる____。

とりあえずBの場合__。

_足が動かないのでとりあえず這いずってこの場を逃げる私__。
[バレたぁ!!に、逃げろぉーーー。]
彼はそんな私を見て携帯を取り出す__。
[あ、もしもしっ。警察の方ですか・・・___?]
終了__。

Cの場合__。
言葉が詰まって上手く喋ることが出来ない私___。
[へへっ、あ、あの、アナタ・・・。い、いい体してるねぇっ。]
そんな私の話を聞いていた彼は携帯を取り出す__。
[あ、もしもしっ。警察の方ですか・・・___?]
終了__。

Dの場合__。
[シャーーー!!!!]
[もしもしっ。警察ですかーーー・・・___?]
終了___。

私の頭は絞ってこれですか(泣)・・・・!!!!!

私はもっと勉強していればと強く思い、これまでの勉学の取り組み方に後悔した___。

アルマジロが防御を固め、それを蛇が睨みを利かせながら相手の様子を伺っているような消耗戦を10分間程続ける・・・・___。

も、もう無理・・・耐えられない・・・・!!!!

私がしびれを切らしかけた時___。

「・・・・・・・・・・・・・。」

彼が私のところへだんだんと近づいてくる。

ザッザッザッ。

私は下を向いていて視界では彼を捉えることは出来なかったが、彼の足音でこちらに来ていることを読み取った。私の鼓動も彼の足音が大きくなっていくにつれ速く大きくなっていく。

こ、こっちに来てる・・・・!!!で、出来ればそのままお家に帰って下さいぃ・・・・・!!!

世の中そんなに思い通りにはいかず、ざっざっ、と聞こえていた足音は私のすぐ目の前で止んでしまう。そして彼は塞いでいた口を開ける___。

「アンタさ・・・・、もしかして・・・・・___。」

も、もうダメだあああああああああああ!!!!!!!!!!!

私には諦めるという選択肢しか残っていなかったが__。しかし、彼の次の言葉に私は拍子抜けをしてしまった___。

「ユウレイ・・・_____??」

「へっ・・・・?????」

ゆ、ユウレイ・・・??と、言いますと?ユー・・れい?

私は今何を言われたのかがさっぱり分からないでいた。

「だから、お化け・・・・__。」

「・・・・・???」

私はうつむいたまま彼が言った二言目を必死に考えるが分からない・・・。しかし、彼は続けてこう言った。

「もし、アンタがお化けなら・・・頼みがある・・・・_______。」

「ぇ・・・・っ?」

私はうつむいた顔を海堂くんの方へと向ける____。

「俺を・・・この世から・・・連れ出してくれないか・・・・・・_____。」

サーーーーーー・・・___。

彼の言葉に反応したかのように桜の木が夜風に煽られ花びらが舞っていく________。

「・・・・_____。」

そうして私は彼と二度目の見つめ合いを交わした________。
 まただ___。
私はその光景に言葉を失った・・・・___。
 また彼の瞳から伝わって来るこの感じ___。
彼の姿は一段と美しく、そしてその表情は・・・・一段と寂しく見えた_____。
 とても冷たくて___。
春なのに暖まることを知らない___。
 まるで彼が・・・___。


____[機械]のようだと・・・_____。