「何々ー?恋でもしたか?」


麻紀が肘で突くように聞いてきた。


彼女はいわゆる恋バナが好きらしいが、私には縁がないからよくわからない。


「そんなはずないじゃない」


否定したのは私じゃなくて、遊佐だった。


「朔に恋愛は早いわよ」


遊佐は少しイライラした様子で言う。


「冗談だよー。玲君みたいな幼なじみがいたら、目が肥えちゃうだろうし」


麻紀は笑いながら、羨望の眼差しで私を見る。


「あんなヤツ、朔には相応しくないわよ」


「遊佐、どうかしたの?」


「……なんでもないわ。ごめんね」


小声で悪態をつく遊佐に理恵が首を傾げると、遊佐は普段通りの笑顔に戻った。