「和馬が好きだった紗月じゃなくて。どうして、私なんかが今でも和馬の傍にいられるんだろうね…」
涙声。
痛々しいほどに。
「…菜月、それ以上言ったら怒るよ」
静かに、怒りを抑えて僕はそう言った。
しかし、菜月は言葉を紡ぐことをやめない。
「だって。私と紗月は、おんなじだったんだよ。
おんなじ日に生まれて。
おんなじ家で育って。
おんなじだけ愛情を受けて。
……おんなじように、和馬を好きになったの。
なのに。
なのに、どうして今、私は紗月と一緒じゃないの?
…ううん、一緒じゃなくてもいい。
同じように大切で大好きな和馬の幸せを願うなら、私じゃなくて、和馬が好きな紗月がここにいるべきなのに。
なのに、どうして。
どうして、紗月じゃなくて、私がここにいるの?」


