「落ち着いたか?」
『……あぁ…悪りぃ…』
一先ず呼吸と腹部の痛みはおさまって、ベッドから降りた。
『葵、芦屋達は』
「……來哉。」
突然名前を言い出す葵を訝しげにみると、葵は真剣な表情で私を見ていた。
「來哉って呼べ」
『……悪いし…』
「何が?」
…………
そう言われれば返す言葉も無く、黙り込むと葵……來哉は満足気に笑った。
……何だ、そんな風に笑えるんだ。
私は目を細めて歩いている葵の横顔を見た。
無口でクールと思っていた來哉は、少し舌足らずな子供の様で、無口じゃなく口下手なのが解った。
部屋を出て廊下を少し歩いて前の大きな扉の前に来る。
そこに何の躊躇も無く入った來哉に続いて少し戸惑いながらも私も入った。

