薇姫/獣帝







「………憎んでる」



そう言った声は掠れてて弱弱しかった。





『嘘だね』






「あ?」




男は私を睨みつけながら胸ぐらを掴む力を強めた。






『“恨むなら、あいつの下についた自分を恨みなよ?”





それってさ、何だか自分を重ねて言った。




あと、俺を見る目が悲しみと憎みに見える。




俺をあいつの下として見てんでしょ?



なのに、俺を憎みに満ちた目で見るのは、何故?』







ーーーーー“あいつ”じゃなく、昔あいつの下にいた自分を憎んでる。





「………っ……」



俯いている男の髪の間から水が床に落ちるのが見えた。





「………ふっ……お前の事、ほんとうはヨソモンって知ってたよ。


ずっと見張ってて一回も来た事無いし、芦屋と一緒に来た事だって珍しすぎるし。



ただ、メンバーじゃねぇのに彼処に来れるって事は、それだけの奴なんだろ?





じゃぁ、人質でいっか。って。」





男は、くたんと座って話し出す。





「俺、何かお前気に入ったから話してあげる」





男は顔を上げて遠慮気味の無邪気な笑みを浮かべた。