裏門に2人で行く途中、あの部屋の前を通ると笑い声が響いていた。


……そんなに楽しいか。


私が自嘲する様に笑みを浮かべたのに、棗は気づかなかった。


裏門には車があった。


運転席に棗が乗って、私は助手席に乗った。




「ちゃんと初日行ったか?」



『行くに決まってんだろ』



「……いや、お前に常識って通じねぇし」


失礼にも程があるだろ。



私は怪訝な顔をして棗を見ると、けたけたと笑っていた。



「ちゃんと飯食えよ?」



『……』


「そこ返事しねぇとダメだろ」



『……』



「……ちょっとでいいから。




食べろ。な?」





棗は優しい口調で子供に言い聞かせる様に言う。



『………うん』




いつも棗には敵わない。




そのまま他愛も無い話をしてたら、新しい私の家に着いた。



一人暮らしの為に用意してくれたマンションの最上階が、これからの私の家。



あの学校に通う様に言われたのは、仕事の為。




此処ら辺は元々治安が悪かった。



だけど、最近異常なくらいに喧嘩で病院に運ばれる者が増えたらしい。




それで、パトロールを〝また〟行う様に指示された。




これは安全な方の仕事。



きっと、カチコミとかはあいつと咲夜などが行ってるんだろう。



咲夜も、私の世話係だった。



いつも私に微笑みかけてくれてた。



だから、何度か仕事を辞める様にも言われた。



女だから?



それだけでは無いと解ってるけど、今まで言われてたから何となくそう繋げてしまう。



それが嫌だけど、現状。



溜息を吐いてマンションのセキュリティを色々解除してからマンションに入った。