「さー、お前等明日は文化祭だぞ~。
準備出来たのか~?」
「「はい……」」
屍となりつつあるクラスの厳つい男達は伊織に何となく痩けてみえる頬を動かして応えた。
「お前等、頑張ったな」
「間に合うと思ってなかったー」と呑気に言う男を今すぐ教室の窓から投げ出したいという衝動に駆られる。
「さ、あとは本番のみ!
俺が教えた執事の極意を忘れるなよ!」
伊織は教卓をバンバン叩きながらニッコリ笑ってクラスの奴等を見渡す。
……言いたく無い事だらけの極意だったから何も説明はしないからね。
てか、あれは執事の極意じゃなくてホストの極意だった。
悲しくなってきて昔何やってたんですか、と聞きたいと思いながら聞きたくないとも思った。
矛盾とはこういう時使うんだろうね。
伊織は喚き散らして最後には満面の笑みで
「頑張れ!
俺は見守っている!理事長室で!」
……死ねばいいと思う。
そんな事を思いながら額を指で押さえた。
『……明日か…』
呟きながらとうとう明日なのか、とか思って憂鬱な気分になった。
隣の紘は暇そうにポケットに手を突っ込んで長い足を組んでいる。
尚は携帯を必死に打っていて、透璃は欠伸をしながらバイクのキーを指先で弄っていた。
伊織はそのうち「じゃぁな!」とか言いながら去って行った。
……教師辞めてしまえ。
とか思いながらも伊織の教師ぶりが無かった事に本当に呆れを越して尊敬した。

