本家の門の中では厳つい男達が居た。




「お疲れ様です」



『久しぶりだな』


「お久しぶりです、琉稀さん」


たくさんの男達は私をさんづけする。



どいつもこいつも私よりは年上。




なのに、敬語。




徹底的な上下関係、さっきもあった。




だけど、私は嫌い。





都合のいい時だけ使う自分もどうかと思うけど、嫌いなのだ、人間関係の上下が。





パッと目に入った久しぶりの顔。



『京汰、翔平』



「お久しぶりです」


「お久しぶり、です」


京汰はいつも通り微笑みながら軽く頭を下げ、翔平は戸惑いながらぎこちなく頭を下げた。



『元気に仲良くやってるか?』


「はい、仲良くはしてませんが」



「おいっ…」


京汰が微笑みながら言うけど、翔平は怪訝な顔をして京汰を見ていた。




『ま、いいや。



またな』



「はい。」



「は、い」




2人と別れて奥室へと向う。





奥室の襖の前に立てば腰が抜けるかと思うくらいすごい威圧感が感じられる。





それを堪えて声を発した。




『琉稀です』



「棗と、「真弓です」



失礼します、と3人で入ると、父は胡座をかいて座って居た。




鋭い眼光を放つ眼は私達を射抜く。



「………もういいのか」



『はい』



「………そうか」



父は私から真弓へと目を向けて説明を促した。




「入院は何が原因だった?」



「………っ」



真弓は言葉を詰まらせながら困った様に目を伏せた。




「…琉稀に止められているのなら、俺が話せと言っている。



琉稀よりは上の立場なのだが」




そう言われれば私も何も言えないし、真弓も何も言えず私に申し訳なさげに口を開いた。





「主な入院理由は琉稀の意識がすぐには戻らないと判断した事と、貧血、栄養失調…あとは疲労やらで体に負担がかかりすぎていた事です。」



真弓の差し出した資料には何かのレポートとグラフ、説明、あとはアルファベットの羅列だった。



父…組長は資料をざっと見て溜息を吐いた。



「琉稀」


『……はい』



「暫くは休め」


そう言われ、思わず俯かせていた顔を上げた。



『どうしてですか?!


体力も戻り、栄養も充分補給しました、血も戻りつつあります…「その油断が何かを起こす引き金になるんだ」



組長は鋭い視線を私に向けて威圧感のある声で私を制した。




「…自分1人の行動で他者にだって迷惑になる事がある。



それを解っていないのは、お前がまだ青臭い餓鬼だと言う証拠だ。」





その通りの言葉の数々に拳を握り締める。





「………今は俺の言う事を聞いていろ。




棗にお前のサポートを任せる」





「わかりました」




組長はそう言って立ち上がった。




和服は好んでいない組長はいつもスーツを着ている。



「仕事に行く」




「咲夜と日向が今回はお付きになられます」




「あぁ」




組長は返事をして私を横目に見てから部屋を出て行った。






悔しくて拳を握り締める力が強くなり、少し伸びている爪が肌に食い込む。





「琉稀、やめろ」



棗に手を伸ばされ、私のその手に触れようとしていたのを払う。





「琉稀………」



『、暫く放っておいて』



言葉を吐き捨てて部屋を出た。





悔しさと怒りと自分の惨めさを隠す為に、




離れの自分の部屋に閉じ籠った。