薇姫/獣帝






『紘、スーツ汚れるよ』



私に抱きつく紘の背中をポンポンと叩いてどかそうとするも、紘は離れない。



淳が笑いながら「紘」と呼んだ。




「晴斗に仕事押し付けて来たんだろ?



俺等もそろそろまずいし、行こうぜ」




紘は顔を上げて私を笑顔で見てから離れた。



淳が大人に見えた…いや、こいつはれっきとした大人だった………




私はバカみたいな事を思っていた。




「あれ、大勢居るねー」



怜央と真弓が戻って来て私達を見て笑う。




「何?帰るの?」



「当たり前だろ、仕事放っぽって来たんだから。



怜央も行くぞ」



「へいへーい」



怜央は笑いながら私に手を振って「またね」と言った。




「じゃーなー」やら「また今度ー」とか適当な挨拶をして嵐の様に去って行った。




「……デジャヴ…」



『何か言った?』



「いや…」




恭輔は笑を堪えてる様にも見えたが、頬が引き攣ってただけらしい。




「……大丈夫、琉稀」



透璃は心配そうに私を見て眉を下げた。




『うん。大丈夫』



微笑んでそう言っても、皆は難し気に顔を歪めていた。



『真弓、退院はいつ頃出来る?』



「怜央にも話したが、大体今から1週間ってとこだな。



大分寝てる間に回復はしてるし。



『そうか……せっかくの夏休みを無駄にしたな』



カレンダーをみれば、退院した後残ってるのは3日だけだ。




「……どっか行くか?」



『いや、家でゆっくりしてるよ』



笑ってそう言うと、來哉は不機嫌そうに肩を落とした。





「ま、暫くは安静にな。


じゃ、俺診察あるから」




真弓もフラフラーと出て行って、皆は息を吐いた。




「ふー、あの人達威圧感ない?」



ずっと尚が静かだったのはそのせいか…




『ごめんね』



「琉稀が謝る事じゃなーいよ」



ウィンクして笑う尚が可愛くて何かムカついた。