「琉稀起きたぁーーー‼」
「やぁっとですね」
「おぉ~」
「………琉稀」
透璃は私に近づいて笑いながら
「お帰り」
と、呟いた。
「あっ透璃、お前抜け駆け!
皆で目ぇ覚めた時言おうって言ってたのにぃ~…」
尚は眉を下げながら頬に空気を溜めて膨らませた。
「………お帰りなさい」
「おか~」
「お帰りっ!」
恭輔、陽、尚と笑いながら言ってくれて、手を握る力を込めた來哉も
「…お帰り」
と呟いた。
ーーガラッ
「琉稀さんのお見舞いの方々‼
いい加減にしてください!何度注意したら………って、あら、起きてる」
看護師さんが鬼の形相で入って来たものの、私の姿を確認して目をパチパチとさせて微笑んだ。
「おはようございます。
すぐに貴女の主治医を呼んで来ます」
看護師さんはパタパタと足音を立てて去って行った。
「廊下は走らないっ!」と声がして、あの看護師さんの「すみません…」と言う声が聞こえた。
私達はキョトンとした顔を合わせて笑った。
「あ、俺皆にメールしてくる」
恭輔はそう言って部屋を出て行った。
「てか、まず起きたならナースコール押して皆に連絡しろよ」
「………」
さっきの怒声が嘘かの様に静かに戻った來哉。
いや、さっきのが珍しかったのか。
私はそんな事を考えていたら腹がズキンと鋭く痛み、咄嗟に押さえた。
「琉稀?」
心配気に私の顔を覗き込む透璃に無理矢理笑みを作り、向けた。
『大丈夫』と呟くと、透璃はベッド傍にある冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
それを私に蓋を開けた状態で渡した。
それを受け取って少しずつ喉に流し込む。
一気に飲むと、一気に出そうだったから。
ちょびちょび飲む私を悲痛そうに皆が見ていた事には気づかなかった。
「お、本当に起きてる」
ドアからひょこっと顔を出した白衣を着て、銀縁メガネをかけた若い男。
「俺は主治医の真弓-Mayumi-ね。
結構起きないからヒヤヒヤさせられたけど、良かったね」
ふぅっと息を吐いた真弓は私以外を外に出して色々な検査を始めた。
「………苦しい夢でも見た?」
『………』
チラリと真弓を見ると、真弓は点滴をチェックしながら私を見ていた。
「………夜、ずっと唸ってた。
夜以外は何も無かったけど、夜になれば異常なほど眉寄せて汗かいてたよ。
………〈楼稀〉って呼びながら」
………
『盗み聞きとは感心せんが』
「はっ!勝手に言っとれ。
晃さんからの命だし、俺名演技したし。
感心して欲しい事だらけだね。」
ケラケラと笑うこの男も、藍城組に縁のある1人だ。
「お前、それにしても栄養失調と貧血結構ヤバかったぞ。
お前のあの薬は調合も効果も完璧だった筈だろ?」
『使い過ぎれば結構負担にはなるだろ』
目を丸くする真弓にニタリと口角を上げた。
『そもそも、あんな物を人間如きがノーリスクで受け入れられる訳無いだろう。』
「お前………だから、出身大学にも研究結果と報告も出さず自分だけ使ってたのか?」
『当たり前だろ。例え、ノーリスクの状態で完成したとしてもいつかは何か問題が発生する。
まぁ、元々大学には報告も何もし無かったけどな』
「………なら…」
真弓は私を医者の顔で見た。
「あれが何かを引き起こすと知ったら、お前に使わせる訳にもいかねぇ。」
『………』
「お前は体を大事にしろよ。
あいつと同じ血が流れてると思ったら安い願いだろ」
ぐっと言葉に詰まる私を見て悲しそうに目を伏せる真弓。
「………何でもいい、獣帝の奴等が用意した物…何でもいいから食え。
いつか身を滅ぼすのは自身だ。
それをよく解れ。」
………真弓は、私に無理な願いだと解っていて言っている。
だが、それ程私の体は脆い作りへと変わってしまったのだろう。
私は苦笑を浮かべながら天井を仰ぎ見た。
『………身を滅ぼすのは自身…か』
「………」
真弓は静かに私の頭を撫でた。

