「…………俺があいつに近寄っていい訳ねぇよ」
怜央さんは悲しそうに言って目を伏せた。
「…………」
棗さんはじっと地面を見ていて、咲夜さんは苦々しく怜央さんを見ていた。
「…………なぁ、獣帝の奴等」
突然、視線を俺等に向けてい日向さんは口を開いた。
「……琉稀は、笑うか?」
悲しそうで悔しそうに言う日向さんの言葉に少しだけ気が紛れた。
「…………笑います、」
來哉は小さな微笑みを浮かべながら手術室の扉を見ている。
手は小刻みに震えているけど、決して目は逸らさない。
來哉の……総長の、強さが身に染みる様に伝わった。
「……そか…」
日向さんはヘラっと笑って俺達への視線を逸らした。
「つか、全員揃ったの久しぶりじゃね?」
「会議以来か~」
「日向、暁月と淳って何してたんだ?」
「お仕事」
「それぐらい解ってまーす。」
状況を軽くするかの様に普通な会話をする人達。
何だか、琉稀が帰ってくるのを信じてるみたいだった。
突然赤々と輝いていたランプが消えた。
息を呑んで暫く待っていると、医者が部屋から出てきた。
「手術は成功です」
医者は穏やかだけど、悲しげに笑った。
「ありがとうございます…」
「いえ……
親族の方は?」
「全員家族の様な者何で、そのままでいいです」
怜央さんは反論しようとした淳さんを抑えて医者に強くそう言った。
「……手術は成功して、命に別条はありません。
ですが、いつ目を覚ますか…あるいは、このまま体力が尽きるまでずっと過ごすか……」
医者はそう言って拳を強く握っていた。
その手には赤く染まった手袋が握られていた。
「……生きてるんですよね?」
「はい……」
「……それだけで、いいです」
怜央さんは笑って医者に言葉を続けた。
「琉稀を、助けてくれてありがとう」
医者の目から零れ落ちた涙が床に静かに落ちて弾け散った。

